*眠る彼女に






俺が大学の頃に智香さんに惚れて、それから始まった片思いが5年。

自分の想いが彼女に届くなんて思ってもいなかったのに、今こうして俺の隣りには規則正しい寝息を立てながら眠る彼女がいる。

そんな夢のように幸せな日々がもう2年も経とうとしていた。

「智香さん…」

俺は智香さんを起こさないように気をつけながら、彼女の頬を指の背で撫でて愛しい名前を小さく口にする。

綺麗で、カッコよくて…時には少女のように可愛くて。

絶対手に入らないと思ってた。

この腕に抱けるだなんて、夢物語だと思ってた。

だけど、自信を持って言える――――手に入った今、絶対智香さんを手放したりなんかしない。

他の誰にも渡したりなんかしない…俺がこの先もずっと彼女を護っていく ――――、ってね。



「ん…秀……起きてたの?」

「ごめん…起こしちゃった?」

彼女は薄っすらと目を開けて、寝起きのせいで少し鼻声になりながら、頬に触れていた俺の手に自分の手を添えてくる。

「早く寝ないと…明日も…って、もう今日だけど…仕事早いんでしょ?寝坊しちゃうわよ?」

「うん。でも、智香さんの可愛い寝顔を見てたかったから…」

「やだぁ…寝顔見てたの?変な顔してなかった?」

「ううん、全然。どの顔もすんげぇ可愛いよ…ずっと見てても飽きない」

「やん、もー。バカな事言ってないで、早く寝なさい?…明日遅刻して和希君に怒られても知らないわよ?」

少し意識がハッキリしてきたのか、彼女はちょっぴり意地悪な表情で、クスクスと笑う。

ほら、こういうとこ。綺麗な顔が一変して、少女のように可愛く笑う…たまんないよね。

そんな彼女を抱き寄せて、頬に軽くキスをすると、くすぐったそうに笑いながら身を捩る。

「和希なんて放っときゃいいんだって。あいつも何だかんだ言って麗香に溺れてんだからさ…今頃激しくヤっちゃってっかもよ?」

「もー、秀ってば下品。明日遅刻して和希君に怒られちゃいなさい」

「そう?遅刻しちゃってもいい?じゃあ、智香さん付き合ってくれる?」

「え…何言ってるの…っ」

それには直接答えずに、俺は彼女の唇をそっと塞ぐ。

静かに、何度も角度を変えながらキスをして、静かな部屋に唇を吸う音だけを響かせる。

「ん…ダメよ…秀…今日はもう…寝かせて?」

「嫌…智香さんが…起きちゃうからいけないんだって…ずっと寝たフリしとけばよかったのに?」

「そんな、無茶苦茶な…さっきまで激しかったんだから…もう無理よ」

あー、そんな事もあったっけかなぁ…2時間も前の事なんて、とうに昔話なんだけど?

だけど、流石にちょっと激しいのはかわいそうだから、激しいのが無理ならば……

「じゃあ、優しくしてあげる」

「そういう意味じゃなくてー」

俺からのキスを受けながら、視線を絡ませる智香さんの困ったような表情に、クスクス、と小さい笑みが漏れる。

仕方ないだろ?何度抱いても飽きないんだから…もっと、もっとって求めてしまうんだからさ。

「まあ、起きてしまった自分を悔やんで?」

「そんな…ぁんっ!?」

「ほら…体は正直じゃん。濡れてきてるよ、智香さん?」

お互いに一糸纏わぬ姿で寝ていたから、スッと手を移動させれば彼女の潤いはじめた秘部に直に触れる事ができる。

パジャマを着て寝なかった事も後悔してよね、智香さん?

まあ…着ていたところで、何の障害にもならないけれど。

「やっ、もう。そういう事言わないでよ…秀の変態!」

智香さんは頬を紅く染めたであろう顔を隠すように、クルッと体を反転させて俺に背中を向ける。

「変態って失礼だなぁ。正直に現状を報告しただけだろ?」

「でも、そういう事を口にしないの!恥ずかしいでしょ?」

「なんで?別に恥ずかしくないじゃん…智香さんも俺を求めてるって証拠だろ?…違う?」

意地悪くそう耳元で囁くと、知らない!と、肯定と取れる返事が返ってくる。

だったらねぇ、行くっきゃないっしょ?

俺は腕枕をしていた方の手で智香さんの顎をそっと持ち上げて自分に向かせると、再び唇を塞いで口内を舌で弄る。

「んっ…ぁっ…」

キスの合間に漏れる智香さんの甘美な声に、脳が刺激されて自分の体が火照ってくる。

すぐにでも智香さんの中に這入りたい衝動を抑えて、ゆっくりじっくりと彼女の中を指で刺激しながら潤していく。

彼女の弱い部分は的確に捉えられる。

だけど、俺は敢えてそこを外すように、焦らすように中を弄った。

なんでかって?そんなの、決まってるだろう?智香さんからの言葉を聞きたかったから…

「やっ…ん…秀…意地悪しないでよ」

「ん?別に意地悪なんてしてないよ…これじゃあ気持ちよくない?」

「いいっ…けど…」

「けど、なに?」

「分かってるクセに…そうやってワザと焦らすのね?」

「あははっ。気付いてた?だって、智香さんから言って欲しいからさ…俺が欲しいって」

中を弄くったまま、肩から背中にかけて唇を這わせて、時折チュッと強く吸い上げて紅い痕を残す。

「そんな事っ…ワザワザ言わなくても分かってるでしょう?」

「智香さんの口から聞きたいの、俺が欲しいって」

「言わなきゃ…ダメ?」

「言ってくれたら、すぐにあげるよ?」

息を吹きかけるように、耳元に唇を寄せて囁くと、それに少し首を捩ってから智香さんが小さく声を出す。

「秀が……欲しい」

背を向けられている上に、真っ暗な部屋の中だから表情までは読み取れないけれど、きっと真っ赤になってるであろう、智香さんの顔を思い浮かべながら、耳朶をそっと甘噛みして囁く。

「いいよ…あげる」

少し智香さんの片足を持ち上げて背後から自身を彼女の熱く潤った秘部にあてがい、ゆっくりと中に這入っていく。

「あっん…」

「んっ…」

途端に絡みついてくる彼女の熱い蜜と彼女自身。

彼女の色っぽい声と同時に自分の口からも声が漏れ、暫くその心地よい空間を止まったまま堪能する。

最高に気持ちいい、智香さんの中。

全然飽きないこの時間…何度でも求めたくなる甘い行為。

それは智香さんだからであって、彼女以外には感じられない満足感。

俺はゆっくりと律動を送りながら、唇を彼女の肩から腕へと滑らせる。

「はぁっん…しゅ…う…いいっ…んっ…もっと…」

「……いい?もっと…なに?」

智香さんの求めてる事は分かってる。

だけど、やっぱ彼女の口から言わせたいんだよなぁ…意地悪か?俺。

「あんっ…も…いつからあなたは…そんなに意地悪になったの?…分かってるクセに…」

「さぁ…いつからだろうね?」

智香さんの少し拗ねたような口ぶりに、小さく笑い声を漏らす。

「もう……もっと…奥まで…来て欲しいの」

「奥まで?…いいよ、いくらでもしてあげる…だけど、やっぱり激しくなっちゃうから覚悟して?」

俺はそう言ってニヤリと笑みを漏らすと、彼女の片足を抱えたまま体を起こし、そのまま足を肩で担ぐと、グッと奥まで腰を落とす。

「んあぁんっ!」

「んっ!すげっ…締まる…気持ちいい?智香さん…」

「いいっ…秀…あぁぁんっ!」

「そう?よかった…じゃあ、こっから激しく行くから…踏ん張ってて…」

そう言ったと同時に律動を送り、彼女の体を激しく揺さぶる。

ベッドが激しく軋む中、彼女のしなやかな体が眼下で上下に揺れ、妖艶に踊り出す。

片方の腕を伸ばして彼女の胸を包み込み指先で蕾を摘むと、それに反応して中も締まる。

俺はそれを楽しむように、彼女の胸を刺激しつつ、もう片方の腕で支えている細くて綺麗な足にそっと口づけをする。

「あんっ…秀っ…もっ…ダメっ…いっ…いいっ…も…イっちゃうっ!!」

「いいよっ…イって?…智香さんがイったら…俺もイクからっ…くっ…」

「あぁんっ…いあぁぁんっ…あぁっ…もっ…あぁぁぁんっ!!」

「……智香っ!!」

俺に向かって伸ばされた智香さんの手を、指を絡ませてギュッと握ると、彼女が頂点まで達せられるように、奥まで激しく律動を送り、強い締め付けを堪能しながら、程なくして自分の欲望が弾け飛んだ。



「智香さん…大丈夫?」

荒い息遣いを吐き出しながら、彼女の髪をそっと撫でる。

「んっ…大丈夫…じゃ…ないかも…」

「やっぱり?…激しすぎた?」

クスクス。と、小さく笑みを漏らしながら、智香さんの体を抱きしめると、腕の中で、もぅ。と小さな抵抗の声が聞こえてくる。

だけどその声には威力がなく、もう半分は夢の世界に行ってしまっているようで。

「愛してるよ、智香さん…もう起こさないから、ゆっくり寝て?」

「ん…私も…愛してる…しゅ…う」

少し笑みを浮かべながらそう微かに囁いて、スーっと言う寝息が後に続く。

また、今日も無理をさせちまったな。

少し自己嫌悪に陥りながらも、きっとこの先もこうして彼女を求めてしまうんだろうな。と、苦笑が漏れる。

「愛してるよ、智香…この先もずっとずっと…あなただけを愛してる。俺が護って行くから…ずっと俺の傍で笑ってて」

俺は小さくそう囁くと、腕の中で眠る彼女にそっと口づけをした――――。



お題配布→『桃色手帳』






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