*口移しで飲ませろよ






「夏風邪はバカしか引かないってよく言うけど、隆志ってばバカだったのねぇ」

「お前ね…看病しに来てんのか、人をバカにしに来てんのかどっちだよ!!」

「え…両方」

クソッ…ムカツク。

先日からどうも体調が思わしくなく、それでも外せない大事な仕事が入ってたから栄養ドリンク片手に頑張ってたんだけど、それが終わって休日に入った今日、俺は39℃もの熱を出してダウン。

小学校以来だぞ、熱だして寝込んだのなんてよ。

気だるい体をベッドに横たわらせている俺を見て、ケラケラと笑う優里を睨む。

病人見て笑ってんじゃねぇよ!

「お前さぁ、彼氏が病気で寝込んでんだからよ、大丈夫?とか、私にうつして早く治って♪とか言えないわけ?」

「ぜってぇー、うつすな」

この女だけは……

「優里、ちょっとこっち来いよ」

「何よ」

俺の為に何か作ろうと思って買ってきてくれたのか、ぱんぱんに膨らんだスーパーの袋をごぞごそと触っている優里に向かって手招きをする。

ヤツは何か危険を感じたのか、訝しげに眉を寄せて一向に近づこうとしない。

「喉渇いたから水取って」

「すぐそこに冷たい水を用意してやってるでしょ?」

「手が震えてコップ持てねぇ」

「嘘つけ。起き上がってちゃんと自分で飲みなさいよ」

「熱のせいで頭クラクラすっし、起き上がれねぇ」

「んもーっ!あんたいくつよ。子供じゃあるまいし…」

何だかんだ言いもって、結構動いてくれる優里のヤツ。

これで、一言多くなけりゃすんげぇいい女なのによ……って、まぁいい女だけどさ。

俺はブツブツ言いながらベッドの脇に膝をついて、コップを手にした優里を見つめる。

「ほら。取ってやったわよ…起きれる?」

「無理。口移しで飲ませろよ」

「はぁ?飲ませろ?…命令すんの、あんた。この私に?!」

ったく、一言文句言わなきゃ気が済まねぇのかよ、コイツは。

俺は小さく息をついてから、じゃあ飲ませて?と、甘えるように言ってみる。

こういうの、あんま性分じゃねんだけど…優里はどうやらこういう言い方が弱いらしいから最近ちょくちょく使ってる。

上手く使い分けなきゃな?

案の定、優里は少し渋ったものの口に水を含み、俺に顔を寄せてくる。

内心してやったり顔の俺は、優里の唇が重なり口内に流れてくる水をゴクンと飲み込む。

そしてそのまま優里の後頭部に手を添えて、もう片方の腕を彼女の体にまわすと一気にベッドに引きずり込む。

「んっ!ちょっ…隆志っ?!なっ、何やってんのよ!!」

「何って?キスしてお前に風邪うつしてやろーと思って」

「はぁ?バッカじゃないの!?ちょっちょっと、ちょっと隆志!!んっ!!」

もがく優里の体をしっかりと腕の中に閉じ込めて、半ば強引に唇を塞ぐ。

あ……やべぇ。マジで頭がクラクラする。

熱のせいで若干意識が朦朧とする中、優里の柔らかい唇の感触を味わいながら、そのまま舌を口内に滑り込ませて堪能する。

最初抵抗していた優里も次第に甘い声を漏らし始め、腕が俺の首にまわる。

「……これで、お前もバカ決定」

「んっ…もー、バカ。本当に風邪がうつったらタダじゃおかないからね?」

「そん時は俺が手厚く看病してやるよ」

「ホントに、もう。まだ熱が下がってないんだから、大人しく寝てなさいよ。ほら、おかゆ作ってやろうと思って買い物してきたんだから」

「ダメ。ここまで来て止めれるとでも思ってんの?」

「は?ちょっと…何する気?……って、ちょっと!何で、服脱がせてんのよ!!」

「お前だってその気になってるくせに?」

俺は意地悪く笑いながら、少し感覚の麻痺した指先で素早く優里の服を脱がせて一緒に下着も取り払ってしまう。

「やっ?!んっ…ちょっと…ダメだってば」

「な〜にがダメだよ。ほら、もう既に濡れちゃってんだけど?体は正直だよなぁ、優里」

自分の体温と同じくらい熱い優里の中に指を入れて、軽くかき回しながら、ペロッと首筋から鎖骨にかけて舌を這わせる。

「やだ…ホント、ダメだって!あんた、熱あるのよ?こんな事してる場合じゃないでしょ?…あっぁっ!ん、ダメんっ。私は…看病しに来ただけなのにっ」

「一回ヤったらすぐに熱なんて引くって。これが一番の薬」

「ちょっ…バカじゃないの…何言ってんのよ!…ダメっ…ダメだってばぁ!!」

「いいじゃん、一回ぐらい。な?一回だけ…ほら、俺も元気になっちゃってっし?こっちの熱下げねぇと、体の熱も下がんない」

「猿か、お前はっ!!」

「何とでも言え…俺は抱きたい時にお前を抱く。それが今、OK?」

優里の胸の蕾を舌先で弄びながら、自分も着ているモノを全て脱ぎ捨て、熱のせいかいつも以上に力が漲っている自身を彼女の中に押し進める。

「んっ…あぁんっっ!!」

「ぅぁっく…なんか…いつも以上に気持ちいいんですけど…」

腕の力が余り入らずに、優里の体に覆い被さるように体を折って律動を送る。

熱がある時って感度が上がるのか?

そんな事を思いながら、優里の弱い部分を攻めるように腰を打つ。

繋がる部分から漏れる水音と、体が重なる音が妙にいやらしく耳に届く。

あ…マジいつも以上にイクの早そう。

「あんっ…あんっ…隆志っ…いっ…いぃっ…も…イっちゃう!」

「ぁっ…ぅっ…俺もっ…もっ…イきそっ…ヤッバ…最短…記録っ」

「隆志っ…隆志ぃっ!!」

俺は首にしがみ付いてくる優里の体を少し抱き起こすように体にまわした腕に力を入れて、激しく彼女の体を揺さぶる。

「ぁっ…ゆうりっ…すげっ気持ちいっ…あっ…もっ…優里、愛してるっ」

「私もっ…あいして…あっやっ…あぁぁんっ!!」

繋がる部分の水音と、激しく軋むベッドの音を朦朧とした意識の中で聞き取りながら、俺は優里の中で果てた。



次の日の朝、すがすがしい気分で目覚めると、俺の腕に頭を預けてる状態で、優里が軽く睨んでくる。

「……あんだよ」

「妙にすっきりした顔をしてるわね」

「おー、お陰さまですっきり爽やか。吐き出すもん吐き出したし?熱も一緒にどっか行ったんじゃねぇ?」

「ホントだ…熱が下がってる」

優里は俺の額に手を当てて、呆れたようにため息混じりにそう呟く。

「これも優里が手厚く看病してくれたお陰だよなぁ?」

「……襲われただけじゃないかっ!!」

「何、怒ってんだよ」

「怒ってないけど!折角おかゆとか色々作ってやろうと思ってたのにぃ!!もう、今後あんたが熱出して寝込んでも、看病になんぞ来てやらないからね!!」

……微妙に怒ってんじゃん。

ま、でも。こんな事言いながらも、次に熱出して寝込んでもきっとコイツは色々買い込んで看病しに来るんだろうな。

で、また俺に襲われる…と。

ホント。可愛いヤツだよなぁ、優里って。

俺はベッド脇に置かれたままの、沢山食材が入っているスーパーの袋を見ながら笑みを漏らし、優里の体をぎゅっと抱きしめた。


――――数日後、優里が寝込んだのは言うまでも無い。



お題配布→『桃色手帳』






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