*理性が打っ飛ぶ1秒前






――――理性が打っ飛ぶ一秒前



まさに姫子と唇を重ねた瞬間思い浮かぶ事。

姫子と交わすキスには、いつも俺の理性を無くさせる何かがある。

心底惚れた女にはこうもいっぱいいっぱいになるもんなんだろうか、と、たまに疑問に思う事さえある。

姫子と付き合う前の俺は何事にも動じず、俺の思うがままに生きてきた…そう、俺中心にって事。

それがどうだ?

最近の…いや、姫子と付き合い出した直後から、俺は全てにおいて姫子中心で、何をするにも彼女が基準となっている。

片時も姫子から離れたくねぇし、アイツが笑えば俺も楽しくて、アイツが怒れば心底反省してしまう。

今までの俺じゃ絶対考えられなかった事。周りのヤツも俺自身でさえも。

友人(ツレ)達からとことん笑い者にされたけど、仕方ねえじゃん?コレが今の俺…藤原新一なんだからよ。


姫子に触れる度、肌を重ねる度に溺れていく俺。

どうしようもないくらい頭ん中は姫子のことしかなくて。

こんな俺を今までの女が見たら笑うだろうな…いや、逆に怒るか。

だってよ、それまでの俺は近づいてくる女に対して性欲処理の対象にしか見てなかったし?例え付き合ってる女がいようと平気でナンパした女をホテルに連れ込んでヤってたから。

女が自分の下でどんなにヨガって悦んでいようがなんにも感じなかった。



――――バカみてぇ…すぐに嬉しがって男に股広げやがって。



なんて鼻先で笑ったりしてた…マジ、サイテーだったよな、俺。

だけど姫子と出会ってアイツに惚れて…どんどん姫子が俺を変えてしまった…いや、本来の俺を引き出したとでも言うべきか?

今まで自分からした事がなかったキスも、今じゃ大半が俺からしてるし、嫌がられても半ば強引に重ねてしまってる始末。

この先、姫子以外は抱きたくないし、抱くつもりもない……つーか、姫子以外は勃たないと言う自信がある(何の自信だ)



姫子の柔らかい唇に自分のを重ねてさ、


「んっ…ぁ」


なんて姫子の可愛らしい甘い声を聞いてみろ。

その時点で俺の脳は破壊寸前。

“理性”なんて言葉は姫子に対して持ち合わせていねぇっての。

もっとその声を聞きたくて、ついついキスが深くなる。

深くなれば必然的にその先も進みたくなって…



「新一っ…いいっ…んっ…気持ち…い…」


なんて声が少しでも聞こえたら、すっげー嬉しくなってテンションまで上がり出す。


「いい?姫子…こうしたら気持ちいいか?」


とかって、更に姫子の気持ちいいポイントを新たに探そうとしてる俺。

もっと姫子の艶っぽい顔を見たい…もっと悦ばせてやりたいって、そう思っちまう。

繋がった時なんて、もう、至福の瞬間で。この上ない幸福感に包まれる。

何度抱いても抱き足りなくて、何度も何度も求めてしまう。

どんなに変態とか猿とか言われようが。



――――…一人の女にこんなにも俺が溺れちまうなんてな。



未だに俺は学校じゃ、クールな2枚目を気取ってるケド、姫子の前じゃそんな仮面も脆くも音を立てて崩れてく。

いくら友人(ツレ)達に変わったと言われても、それはホンの一部分で本当の俺自身じゃない。

それを見ていいのも、本当は情けなくて独占欲が強くて姫子に滅法弱いって言う俺『Secret Face(本来の姿)』を見せられるのも小暮姫子ただ一人だから。



――――とことん最期まで付き合ってもらうからな?姫子




「なあ、姫子。キスしよっか?」

「んー?クスクス…どうしたん?急に…って、いつもやけど」

「いつもって…まあ、いつもだけどよ…」

「あ…キスしても、そのあとはナシだからね?昨日も、は…激しかったんだから」

「あははっ!なーに顔を紅くしてんだよ、姫子。か〜わ〜い〜い〜♪」

「なっ!?もー、新一のバカ!そうやってからかわんといてよ!!」

「可愛いから可愛いって言っただけだろ?なぁ、姫子…」

「ん?なぁに、新一」

「…愛してる」

「新一…。ん…私も、愛してる」



俺の唇に姫子のぷっくりとした柔らかい唇の感触が広がる。



――――そのあとはナシだからね?



ってか?そんなの、無理に決まってんじゃん。

だって、キスをしたら…理性が打っ飛ぶ一秒前だから。



お題配布→『桃色手帳』






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