「みなさん早いですね。一番乗りぐらいのキモチで来たのに、負けちゃいました。」
「たまたまだよ、たまたま〜。」
「同じく。まぐれヒットみたいなもんです。」
「ははっ、そうなんですか。」
ニコニコな人とふわふわの人のコトバに、スマートな人が笑いながらカウンターに腰を下ろす。
「北山さん、お飲み物は?」
「オレンジジュースとか、あります?」
「ありますよ。待ってくださいね。」
ご主人様がオレンジジュースをスマートな人の前に差し出しながら、「北山さんも、何か軽く作りましょうか?」と問いかける。
隣からメニューを受け取ったスマートな人はメニューに視線を落とし、「迷うなぁ〜。」と呟いた後、「ちょっと考えといていいですか?」と答えた。
「わっかりました〜。」
そう答えて、ご主人様がカウンターの内側にあるガスコンロの前に移動する。
ふわふわの人が、手にしたグラスをクイッと煽り、スマートな人に顔を向けた。
「フットサルのお相手、北山さんとこの大学の職員さんなんですって?
さすが、仕事で自宅に籠ってる俺なんかと違って、顔が広いなぁ。」
「いやいや、たまたまですよ、ホント。学生時代サッカーをしてた人でね。
“フットサルの相手チームを紹介してほしい”って言ったら、“ウチのチームとやろうか”って言ってくれて。」
「へぇ〜。」
「草野球やってるっていうのはよく聞きますけど、フットサルやってるって話はあんまり聞いたことがなかったんで。
もう少し手こずるかと思ったんですが、意外と早く見つかって、ちょっと拍子抜けしちゃいましたよ。」
いいなぁ、フットサルの試合かぁ。
渋ってるコックさんの代わりに、俺もまぜてくんねぇかな〜。
・・・ってムリだよな。
おかしいもんな、人間4に犬1、っていう構図は・・・。
『そういえば、テツ、聞いた?』
おい、ユタカ。
いつの間にオレのことアダ名で呼んでんだよ・・・。
『・・・んぁ?な、なんだよ・・・』
・・・まぁ、いいけど。
俺が詰まりながらもユタカに聞き返していると、横からユウジが割って入ってきた。
『ご主人様のフットサルの相手チーム、どうやら“俺たちの仲間”を連れてくるらしいんですよ。』
『“仲間”・・・?ということは何か?俺たちも・・・?』
『そう、ご主人様たちがプレイしてる間、俺たちも5対5でフットサルできるってことだよ。』
俺の話を受けて、ヨウイチがコトバを続ける。
犬5 対 犬5、か。
おもしろそうじゃねぇか。
『なぁるほどねぇ・・・』
これはさらに楽しみが増えたな。
ご主人様がやるのをただ見るだけだと思ってたから、正直うれしい。