ご主人様の店への出勤前、カオルんところのグリルかドッグカフェに立ち寄って軽くメシを済ませることが多くなったこの頃。
今日は珍しくどこも寄り道せず店に来た。
店に到着するやいなや、ご主人様はシャツの袖を捲りながらカウンターの中に入っていった。
「こっちが落ち着いたらお前のメシもあとから作ってやるから。もうしばらく待ってな。」
『は〜い。』
昼夜逆転の生活で疲れたカラダを休めるようにオレは床に伏せた。
瓶ビールを冷蔵庫に詰めたり、グラスを冷やしたり、果物やフードの在庫を確認したり。
そういう見慣れた光景を見つめながらBGMに耳を傾けていると、ドアが開く気配がした。
上体を起こして、顔をそちらへ向ける。
「こぉんばんわ〜!」
ニコニコな人がドアを開けて、ニッコリニコニコな笑顔を覗かせた。
そのドアの隙間からユタカがシャカシャカシャ〜っと軽やかな爪音を立てて走り込んできた。
「あれ、安岡さん早いっすね。」
「店は若い子に任せてきました。今日はもうボク指名の予約も入ってなかったし。」
「それはそれは。お疲れっす。」
オレに向かってコンクリートの床を半ば滑るようなカタチで突進してきたユタカは、手前でブレーキをかけ、滑る余韻をうまく活かしてオレの前でピタッと止まった。
『あ、何、ここ君んち?』
『いや、家じゃねぇけど・・・ご主人様の店。』
『へぇ〜。いい店じゃ〜ん。』
ナニサマだ、お前・・・。
『・・・で?何しに来た?』
『え、知らないの?フットサルの試合、日程とか相手とか、モロモロ決まったらしいよ?』
『マジか!!』
『マジよ、マジ。』
ユタカとそんな会話している間に、ニコニコな人がカウンターに腰かけ、早くもアルコールの注がれたグラスを傾けていた。