うぃーん。
自動ドアが開き、スーツでパリッとキメた綺麗な女の人が店内に入ってきた。
そして、ふわふわの人に向かって一直線に歩いてきた。
「サカイ先生!こんなところで何油売ってるんです?!締切は今日の4時半って言ってたでしょ?!はい、帰りますよ!」
「のぁっ!かっ、帰るからっ!はっ、離して〜っ!ゆゆゆ許して〜っ!」
スーツの女の人は、狼狽えるふわふわの人の腕をグイッと掴むと、そのままズルズルと自動ドアに向かって引きずり、レジにバンッとレシートと金を置いて出て行ってしまった。
「すごいな、あの人・・・」
凄まじい光景を呆然と見送るご主人様。
「彼女、酒井さんのこと好きみたいなんですけどねぇ、彼、全く気づかないみたいで・・・もったいない話ですよ。」
スマートな人はそう言ってまたクスクスと笑った。
「あっ、あのっ、ユウジくんココに残したまま帰っちゃったんですけど、大丈夫なんすか・・・?」
「あぁ、いつも酒井さんのアシスタントの方が迎えに来ますよ。それに彼はひとりでも帰られますよ。」
「『彼は』、ねぇ・・・」
ご主人様は残されたユウジを見て呟いた。
「すいません、オレンジペコーと、ドッグクッキーを。」
「あっ、はっ、はいっ・・・かしこまりました・・・」
スマートな人が注文したら、エプロンの女の人もしどろもどろになった。
しばらくして、スマートな人の元にティーポットとカップ、砂時計とクッキーが運ばれた。
スマートな人はクッキーをひとつ摘み上げた。
「ヨウイチ、クッキー来たよ。おいで。」
『あ、今行く。』
スマートな人に呼ばれトットットッと軽やかなステップで向かったヨウイチは、スマートな人の足元でお座りをした。
スマートな人がクッキーを持った手をヨウイチの頭上で小さく回すと、ヨウイチは後ろ脚で立ち上がりクルクルと回った。
『きゃぁっ☆』
途端に店内はメスの犬たちのピンクのため息で埋め尽くされる。
スマートな人が手を止めたのを合図に、ヨウイチは4本の脚でスクッと立ち、片方の後ろ脚をスッと後ろへ引いた。
こっ、コンテスト立ちだ!
『きゃぁっ☆ヨウイチさんステキぃっ☆』
そこここで黄色い声があがる。