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うぃーん。

またも自動ドアが開く。

今度は変なイラストが描かれたトレーナーに、袖に3本線が入ったウインドブレーカーを羽織り、髪の毛を後ろで結わえてメガネをかけた地味めな女の人が入ってきた。

女の人はユウジに歩み寄ると、リードを掴んだ。

「サカイ〜。帰るよ〜。」
『俺の名前はサカイじゃないっ!ユウジだぁっ!』

がぶ〜!

ユウジが女の人のふくらはぎを噛んだ!

「こら、噛むな噛むな。ほら、行くぞサカイ。」

女の人はむちゃくちゃ冷静にユウジの頭をピシッと叩き、ユウジがひるんだ隙にリードを目一杯引っ張り、ズルズルと引きずるように強引に連れ帰ってしまった。

『テツヤさぁん!ヨウイチぃ〜!助けてぇ〜!!』

無理だ・・・残念ながらあの人に立ち向かう勇気は持ち合わせていない・・・すまん、ユウジ・・・

「これまたすごい女の人だなぁ・・・」
「あれが酒井さんとこのアシスタントさん。あの人も酒井さんのこと好きなんですよね。
でもやっぱり酒井さんは気づいてない。ああ見えてメガネ外すとすっごく美人なのに・・・もったいないですよ、まったく。」
「・・・モテるんですね、酒井さんって・・・」
「またまたぁ。そう言う村上さんも・・・今熱い視線が2・・・いや、3人からかな?注がれてますよ。」
「なっ?!」

ご主人様はキョロキョロと辺りを見渡している。

「どこっ?!誰っ?!ひっ、ヒントっ、ヒントだけでもっ!!」
スマートな人に詰め寄り、小声で問い詰めるご主人様。

「秘密です。」
クスクスと笑うスマートな人。

翻弄されてるなぁ、ご主人様・・・

あ、そう言えば。

『なぁ、ヨウイチぃ。』
『ん?何?』
『あいつ、何でメガネの女の人にサカイって呼ばれてたんだ?』
『さぁね。あの人だけサカイって呼ぶらしいよ?
この前、ユウジが「あのメガネの人に動物病院連れて行ってもらったら“サカイ”で問診表書かれて、呼ばれる時も診察券の名前も“酒井サカイ”なんだ」って泣いてたよ。』

恐るべし、メガネ女・・・

『あっ、そうだ・・・お前、ユウジに噛まれないのか・・・?』
『うん。一度も。』
『なんで?!おまっ、コツ教えろよ、コ・ツ!』
『ふふっ、秘密だよ。』

俺も翻弄されている・・・

また今日も新しい友達ができた、ようだ。
しかし、いろんな意味で、ハラ割って話せる関係ではない。

いろんな意味で。

 

【第3回/終】

 


ガァ子さまより☆Many Thanks!


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