「先生〜、お久しぶりです〜。どうぞ、こっちこっち。席開いてますよぉ〜。」
ふわふわの人がスマートな人を手招きする。
「あっ、酒井さん。お久しぶりです。」
ヨウイチの飼い主であるスマートな人が、ふわふわの人の元へやってきた。
「紹介しますよ。こちら村上さん。」
「あっ、ども、はじめまして。」
「こちら、北山先生。」
「はじめまして。」
「『先生』ってことは、北山さんも漫画家さんですか?」
ご主人様がスマートな人に質問した。
「北山先生は、大学の教授ですよ〜。」
スマートな人の代わりにふわふわの人が答える。
「教授ですか?!へぇ〜、すごいなぁ!」
「いえいえ。『先生』っていっても、大学の教授というのは何の資格がなくてもなれるものですからね、たいしたことないですよ?」
「いやいやいや!すごいですって!」
ご主人様とふわふわの人がブンブンと顔を横に振っている。
「大学で何を教えてらっしゃるんですか?」
「心理学です。恋愛心理学。」
「へぇ〜。すごいな・・・」
「俺はねぇ、先生の本、全部持ってるんすよ〜!特に最新刊『あなたの心はもう決まっている』はすっごくタメになりましたよ〜!」
ふわふわの人がテンション高めに力説する。
「買ってもそれを実践しなきゃ意味ないんですけどね。」
「あっ、ま、まぁ、ね、うん、その、なんだ、あの、そ、そのうちね・・・」
ふわふわの人もしどろもどろになっている。
「へぇ〜、おもしろそうだな。今度、俺も買って読んでみますよ。」
ご主人様、またしても興味津々だ。
「村上さんはお仕事は何を?」
「soul barをやってるんですよ。」
「へぇ〜、soulですかぁ。駅の向こう側にあるグリルのご主人もお好きみたいですよ。行かれたことあります?」
「えぇ、グリルの黒沢さんとこの犬が迷ってたみたいなので連れてってあげたんですよ。その時に。」
スマートな人は手をグーにして口元に運び、クスクスと笑いながら「そうですか」と言った。