「ここか。グリル・メキメキ・・・看板で見ると、ホントすげぇ店名だな・・・」
♪からんころんか〜ん
「いらっしゃいま・・・あ、カオル!?」
カウンターの中のコックさんが横にいるヤツの名前を呼ぶと、短〜い足でテケテケ〜っとコックさんの足元へ駆けていった。
「どこ行ってたんだよ〜!探してたんだぞ〜!」
叱りつけるように、心配したように、安堵したようにカオルを抱き上げる飼い主。
『ただいま〜♪』
当の本人(犬だけど)は、単純に帰宅できてうれしそうだ。
ちっちぇ〜尻尾を見えないほど振ってやがる。
「すいません、ウチのカオルを見つけてくださいまして・・・。ありがとうございました。」
深々と頭を下げるコックさん。
「いやいや、俺がレコード屋に入ってる間にウチの犬と仲良くなってたみたいでね。」
仲良くなってねぇ!
キャッチボール成立しなかったのに!
これだけは言える・・・アイツとは絶対サッカーできない!
「あはっ、そうだったんですかぁ。よかったなぁ、カオル、いい友達ができて。」
だから違うっつうの!
「このたびはご迷惑をおかけしてすいませんでした。よかったら何か食べて行かれません?ごちそうしますよ。」
「いや、俺はそんなつもりでは・・・」
「遠慮なさらずに。どうぞ。」
「いや、あの〜、仕事柄昼夜逆転してて、2時過ぎに食ったとこなんですよ。」
「軽食もありますよ。カツサンドとか。」
「いいんですか?」
「もちろんですよ〜。是非是非。」
コックさんは冷蔵庫から材料を取り出した。