『名前、なんていうの?』
『・・・テツヤ。』
『俺はカオル。よろしくね。』
『・・・』
『歌うまいねぇ』
『わかったっつうの』
『なんだよ〜。冷たいなぁ。』
『・・・』
『ねぇ、俺の家どこにあるか知らない?』
『知るか!』
『困ったなぁ〜』
『・・・手がかり、ねぇのかよ』
『う〜ん・・・』
『・・・』
『・・・ない。』
『ねぇのかよ!』
そんなやりとり(キャッチボール不成立)をしていると、レコード屋からご主人様が出てきた。
手にはレコードが2枚。
「あれ?テツヤ、そいつどうした?友達か?」
『違〜う!俺、ご主人様以外に友達いないし!』
しかもこのカオルってヤツ、なんだか知らねぇけど、俺のご主人様に対して舌出して“はっはっ”言いながら、ちっちぇ〜尻尾振ってるし!
懐くな!俺のご主人様にっ!
「ははっ!お前かわいいなぁ!」
ガーン・・・俺に“かわいい”なんて一度も言ったことないのに!
ご主人様は、ショックで伏せてしまった俺の頭を撫で、「お前はかっこいいのが売りだからいいの!」と言ってくれた。
俺、この人の飼い犬でよかった!
俺はいいところを見せようと思い、リードを持ったご主人様をさっきの電柱まで引っ張っていく。
俺たちの後ろをヘラヘラしたコーギーがついてくる。
「ん?“迷い犬 探しています”・・・“カオル ウェルッシュコーギー
♂ 2才”・・・」
ご主人様は、俺の横にいる変なヤツと貼り紙を交互に見ながら読んでいる。
「“見つけてくれた方にはごちそうします”?!・・・なんだそりゃ!
・・・“グリル・メキメキ”?!・・・どんなネーミングセンスしてんだよ!」
ご主人様、貼り紙の内容に呆れているみたいだ。
「・・・仕方ねぇ、連れてってやるか。来い、カオル。」
『やったぁ、帰れる〜♪』
だからっ!俺のご主人様に“はっはっ”しながらうれしそうについて行ってんじゃねぇよ!
俺は、ご主人様の足元にじゃれつくカオルってヤツの間に割って入った。
『懐くなよ!』
『何それ、ヤキモチ?“嫉妬”と書いて“ヤキモチ”?』
『うっせぇ、短足。』
『・・・』
『・・・泣くなよオイ。』