起きるのはいつも昼2時過ぎぐらいだ。
メシを食った後は家でのんびり過ごして、夕方になるとまたいつものように店に向かう。
電信柱にマーキングしていると、その電信柱に“迷い犬 探しています”というポスターが貼ってあるのが目に入った。
犬のくせに迷子になってんじゃねぇよ!
帰巣本能とかあるだろ普通よぉ。
同じ犬として情けないね、まったく。
店に向かう道中も、ご主人様の“寄り道スポット”がある。
レコード屋だ。
ご主人様は、店の前に置かれたベンチのパイプにリードをつないで店内に入っていった。
ご主人様、この店入ったらなかなか出て来ねぇんだよな〜・・・
けどまぁ、店内でかかってるソウルミュージックが聴こえてくるからいいんだけどさ。
♪〜〜♪♪〜
俺は伏せの態勢で目を閉じ、店内で流れているソウルを口ずさみながら待っていた。
『うまいねぇ』
いきなり犬の声。
まぶたを開けると、1匹のウェルッシュコーギーが目の前にいた。
『近っ!!なんだよお前!?』
あまりの驚きに俺は立ち上がった。
『歌、うまいねぇ』
なんだこいつ。
初対面なのに緊張感というか警戒心というか、そういったものが全く感じられない。
けどこいつどっかで見たことあるな・・・
ぽく・ぽく・ぽく・ち〜ん♪
あ!思い出した!
こいつ、帰巣本能ないやつだ!
『どこのどいつか存じ上げませんがね、お前探されてるぞ?』
『そうなんだよね〜。迷っちゃってさ、帰れないんだよね〜。』
『もっと焦れよ!』
なんだこいつ。
なんで俺がこんな奴と話さなきゃならねぇんだよ。