「あ、挨拶が遅れました。黒沢って言います。ここの店主です。」
「あっ、村上です。ここからちょっと行ったところで“Ruica”っていうSoul barやってます。」
「へぇ、ソウル好きなんですか?俺も好きですよ。今度お店行かせていただきますね。」
「えぇ、是非。お越しください。」
「あ、あの子はなんて名前なんですか?」
コックさんがカツを揚げながら、ご主人様に聞いた。
「テツヤって言うんですよ。」
「へぇ、テツヤくん。かっこいいね〜。」
いやいや、それほどでも。
「テツヤくんにも何か作ってあげようかな〜。」
マジ?!マジすっげぇうれしいし!
『連れて帰ってくれてありがとうね。』
カオルが俺の横に走ってきて言った。
『・・・別に。俺何もしてねぇし・・・っていうかお前、手がかりすげぇあるじゃねぇかよ!初めから“グリル”って言えよ!』
『ホントだ。あったよ、手がかり。』
『・・・』
俺が呆れている間に、ご主人様とコックさんは、インディソウル話に花を咲かせていた。
『テツヤさぁ、友達いないの?』
『うっせぇな、ご主人様が友達なんだよっ。』
『それは俺だってそうだよ。そうじゃなくて、犬の友達は?』
『・・・生活のリズムが違うから、いねぇよ。』
『そっか。じゃあ、今日のお礼に俺のお友達紹介してあげるよ。』
『“いいとも”か!』
『いや、“いいとも”じゃないんだけどさ。』
『わかってるっつぅの!』
「はい、テツヤくん。お肉あげるね。これからもウチのカオルをよろしくね。」
よろしくって言われちまったし・・・
仕方ねぇ。肉ももらったし、これからも相手してやっかな。
【第1回/終】