「・・・無理だな・・・」
「さすがにふたりでは無理だよ〜。」
残念ながらジイサン邸の周りに民家はなく、援助を呼ぼうにも呼べる状態ではありません。
困り果てたふたりの耳に届いたのは・・・
「・・・♪自分〜で〜作ったカレぇ〜、さ・い・こ・う!」
朝ごはんのお手製カレーを、「(^o^)」って顔をして食ってる犬の鼻歌でした。
「おお!犬!お前も手伝え!」
「ちょっと〜、犬って呼ぶのやめてくんないかなぁ〜。結構傷つく〜。」
あんまり傷ついてるようにも見えませんでしたので、ジイサンは別にコレといったツッコミもせず、犬をカブの前に連れていきました。
「うわ、すっごぉ!コレ、カレー何杯分に相当するかなぁ〜。」
「知るか!・・・ってそんなことはいいから、とにかくこれ抜くの手伝ってくれ。」
「おっけ〜おっけ〜、まかしといて。オレ鍛えてるから、たぶん平気!」
「・・・頼むから『気をつけ』の体勢ができないほどに鍛えるのはやめてくれよ・・・?」
「ん?気をつけ?意味わかんない。」
「ゴタゴタ言ってねぇで・・・いくぞ?・・・せ〜のっ!うんとこしょ〜、どっこいしょ〜〜〜っ!!!」
それでもカブは抜けません。
3人(?)、力を合わせて頑張ったのに・・・
「・・・ってダメだこりゃ・・・」
「うぇ、二日酔いの状態で朝からこんな・・・うぇ、吐きそう・・・」
「吐くなよ!ゼッタイ吐くなよ!ガマンしろよ!」
「抜けないねぇ〜・・・」
そんな3人の耳に届いたのは、
「ねっこひ〜ろしっ!ねっこひ〜ろしっ!ん〜、ポーツマスポーツマス!しょ〜りゅ〜けん!しょ〜りゅ〜けん!」
なんだか古めかしいクラシカルなギャグをしている猫の声でした。
「朝から何やってんだお前は!」
「いや、あのね、深夜番組見てたらね、久々に猫ひろしが出てましてね。」
猫は夜更かししてバラエティ番組を見ていたようです。
さすが夜行性の猫です。寝ずに朝を迎えた、そのままのテンションのようです。
「ちょ、お前も、来い。」
「『濃い』?ヒゲがですか?」
「ちゃうわボケぇ!」
孫と犬に対するイライラも募っていたため、ジイサンは思わず声を荒げました。
「ほら、コレだよコレ・・・」
「でっか!ななな、なんすかコレ?!」
「朝起きたら、なんか知らねぇけど生えてた。」
「それはまたミラクルオラクルだな。カブといえば、『どうぶつの森』で・・・」
「その話長くなりそう?」
猫の話を、孫がポッキリと折ってしまいました。