「とりあえず全員でチカラを合わせてコレ抜くから!・・・しゃ、いくぞ!うんとこしょ〜、どっこいしょ〜〜〜〜っ!!!!」
それでもカブは抜けません。
4人がかりですよ?それなのに抜けないなんて、ん〜譲二ショック!(誰だよ!)
「・・・三途の川や〜・・・」
「渡るなジイサン!」
もう息もたえだえ、フラフラとあらぬ方へ歩いていきそうになるジイサンを猫が引き止めます。
「もうさぁ、無理なんじゃない?これ。抜かずにさ、包丁で切り分けていけばいいんじゃないの〜?」
犬がもっともなことを言いました。
「・・・それもそうだな。」
ジイサンが納得しかけたその時でした。
「あれ?みんな揃って何やってるの?」
騒ぎを聞きつけて現れたのは、ジイサンの家に住み着いているネズミでした。
「あっ、鼠先輩っ!」
「♪ぽっぽぽぽぽ、ぽ〜ぽ〜(低音)って歌わせないでよ、そんな歌。」
ネズミはとってもクールでしたが、ノリツッコミはちゃんとできるようでした。
「ああ、お前か。見てのとおりだよ。でけぇカブができちまって、抜けないから包丁で切っちまおうぜって言ってたとこだよ。」
「なぁんだ、そんなこと。」
「そんなこと・・・?」
「普通に引っ張るから抜けないんだよ。」
ネズミは大きなカブを見ても特段驚く様子は見せず、カブの周辺をぐるりと回った後、トントンと足で合図しました。
「ココ。」
「ココ?」
「ココに岩があるでしょ?コレを使って、っと・・・」
ネズミはスッタカタッタッタ〜ッと走って、自分のカラダよりも長い板切れを持って戻ってきました。
「それで、こう。」
ネズミは岩とカブの間に板をかまして、飛び出た板の先っちょにピョンと涼しい顔で飛び乗りました。
すると。
ころり〜ん。
大きなカブは、いとも簡単に地面から抜けました。
ネズミったら体重めっちゃ軽いのに!やるわね、この子!(←ナニサマだよ?!)
「カブは上に向かって生えてるんだから、いくら横から引っ張っても抜けないよ?テコの原理を使えば簡単でしょ。」
猫は「なるほど!」と言いながら「ポンっ!」とグーでもう片方の手のひらを打とうとしました。
が、ビートたけしのようにグーと手のひらがズレており、手のひらで自分の顔面を叩きました。(もちろん作為的に)
「なんでもチカラまかせにやればいいってもんじゃないよ。『3人寄れば文殊の知恵』って言うでしょ?まずやる前に、よく考えないと。
・・・じゃ、今から女の子の相談乗らないといけないんで、またね。」
ネズミは表情ひとつ変えずに颯爽と去っていってしまいました。
「ぬ、抜けたね・・・」
「ああ、何とかな・・・」
「意外と簡単に抜けるものなのだな・・・」
孫とジイサンと猫は、去っていくその男前で小さな後ろ姿を見送っていました。
「あれっ、何これぇ〜?!コレ、カブじゃない!」
犬の声がして3人が振り返り凝視すると、カブと思われていた白い物体に顔がありました。
猫がいつもよく描いている顔のように見えます。
「オレの絵に似てるが、こりゃ正直気色悪いな・・・!」
「コレ、人面瘡なんじゃな・・・うぇ、は、吐き気が・・・」
「だからこんなとこで吐くな!トイレ行って吐けっつの!」
「・・・すっごいなコレ〜。何だろ〜??」
ジイサンは気味悪がって庭にカブを放置していましたが、その後誰かが持って帰ったのか、いつの間にか跡形もなく消えていました。
時を同じくして、犬が謎の白い具材を使って大量にカレーを作っていることを、他の4人は知る由もありませんでした。
教訓。
「ちゃんと作戦を立てれば、意外と少人数でできるもんなんじゃない?」
だけど犬的には、めでたしめでたし(なんじゃそりゃ)
そして庭では「おしまい」の意味を込めてジイサンが弓取り式をやっていましたとさ、とさとさ土佐ノ海(謎)