盗賊と妖怪は、簡易の家にある程度近づいたところでバイクを止め、徒歩で近づいていく。
そして中の人間からバレないように窓からそっと覗き見ながら、聴診器で3人の会話を盗聴した。
「近い方のボールでもまだまだ先だからね、この辺で野宿しないと。砂漠でのたれ死んじゃ意味ないし。急がば回れだね。」
「ドルガバ?」
「“がば”しか合ってないし。」
「ねぇヨウイチ、遠い方はどこにあるの?」
「ここからまっすぐ北へ向かった辺りかな?」
「あ〜、早く5個集めて願い事叶えたいなぁ〜。」
「お前の願いは何なんだよ?」
「カレーに困らない生活を送りたい、だよ〜。」
「アホくさ・・・」
「なんだよ〜!オネエチャンに囲まれてウンタラカンタラよりマシだろ〜?!」
「いや、どっこいどっこいだと思うよ・・・」
外でこのやりとりを聞いていた盗賊は、肩に乗っかって同じく聞き耳を立てていた妖怪に小声で話し掛けた。
「今の聞いたか?」
「うん。聞いた!」
「5つ集めると願い事が叶う・・・」
「ボクだったらねぇ、この格好で女の子に可愛い可愛いって言われるの飽きちゃったからねぇ、ちゃんとした人間の男になって女の子に可愛い可愛いって言われたいなぁ〜☆」
「可愛いなどという言葉は男に向かって言うもんではないっ!」
「じゃあユウジの願いは何なのよ?」
「えっと〜・・・あの〜、ほら、あれだよ・・・とりあえず女性恐怖症を治したいな・・・」
盗賊ユウジの言葉を聞き、妖怪はいきなり若い綺麗な女性の姿に変身し、ユウジに抱きついた。
「うっふぅ〜ん☆」
「ぬぁぁぁっ!何やっとんじゃユタカっ!離れんかコラ!
っつうかそもそも『うっふん』って何だ!?日常生活で『うっふん』など言うオンナ見たことないぞ!」
ユタカと呼ばれた妖怪は元の姿に戻った。
「女性恐怖症のあんたに何がわかる?」
「うっ・・・・・・そ、そんなことよりっ、もう少し情報がほしいところだな・・・」
ユウジとユタカは再び中の様子を覗き見た。