「で?」
男は用件の続きは何かということをこの1文字で尋ねてきた。
「ねぇねぇ、そのボールちょうだいよ〜、オッサン。」
「“オッサン”だぁ〜?!テメェ、誰に向かって言ってんだよ、このクソガキ!!」
「こらカオル、神経逆撫でしないでよ・・・。ごめんね、お兄さん。」
「それねぇ、5個集めると願いが何でも叶うんだって〜。ね、ヨウイチ?」
これ以上人数を増やしたくなかったヨウイチは、なんとか話術で交渉してボールだけを手に入れたかったが、カオルの口を封じるのを忘れていた。
「マジかそれ!綺麗なオネエチャンに囲まれてウハウハになれんのかそれ!」
フハーフハーと鼻息荒くヨウイチに詰め寄る男。
「下品な願いだこと・・・」
「はぁっ?!じゃあテメエの願いは何なんだよ!」
「僕は、常に自分で自分を高めていく努力をしているんだ。けれどすでに完璧すぎて、いくら努力してもこれ以上完璧になれないから、少しでも現状以上の自分になりたいって思ってるよ。」
「・・・何だそりゃ?禅問答かよ。」
「全く意味わかんないよぉ。」
「わかってもらえなくて結構です。・・・ところであなた、お名前は?」
ヨウイチは男に名を訊ねた。
「テツヤ。一応、仙人らしいよ。」
「・・・は?『らしい』ってなんなの?あなた、強いの?」
「ま、一応。最近闘ってねぇからわかんねぇけどな。」
「ふ〜ん・・・」
「あ、テメェ今疑ったろ?」
「a little、ね。」
「発音のよさが鼻につくな・・・わかった、見せてやるよ。俺の実力ってやつをな。」
テツヤはそう言うと、大きく深呼吸を1回して構えた。
「か〜・・・め〜・・・は〜・・・め〜・・・はぁぁっ!」
気を溜めて手のひらから押し出すように放った技は、凄まじい光と音を伴って彼の家を一発で崩壊させた。
「すごい・・・すごいんだけど・・・家壊す必要はなかったよね・・・」
「いいんだよ、んなもなぁ。オネエチャンに囲まれて暮らせたら家なんていらねぇ。」
茫然とするヨウイチの言葉に、テツヤは平然と答えた。