「あのさぁ、その熊、君が仕留めたの?」
「そうだよ。」
「どうやって?」
「左のハイと、かかと落とし。」
「・・・足、届かないよね?」
「ちぇっ・・・バレたかぁ。」
「そこで嘘つく必要性がわかんないんだけど。」
「ホントはねぇ、ダイビングボディプレスとストンピング。」
「なんとなくそんな気がしたけどね。まぁ、でもそれで熊を仕留められるぐらいなんだから、君結構強いんだよね?」
「ん〜。どうだろう。食うために致し方なく、って感じかなぁ。」
ここでヨウイチは考えた。
技の華々しさはないにしろ、戦闘能力はかなり高い。
発言はちょっとピント外れだが、尻から長いしっぽが生えており、タダモノではなさそうだ。
この先、ボールを集めるのには、彼の力が必要なのではないか?
それに、彼を味方につけたら、ボールを1つ手に入れたも同然だ。
ヨウイチは頭の中の計算ソフトとデータをフル活用し、あるひとつの結論を導きだした。
“こいつを利用しない手はない”、と。
「僕はヨウイチ。君の名前は?」
「オレはカオルだよ。」
「ねぇ、カオル。一緒に旅に出ようよ。」
「は?オレこれから熊カレーの煮込みの作業が・・・」
「あ〜っ、もう!じゃあカレーできるまで待っててあげるから!」
「待っててくれるのは有り難いけどさ、何でオレが君と一緒に旅に出なきゃいけないのさ〜?」
「これ5個集めたら龍が現れて願いを叶えてくれるんだよ?」
「へぇっ?!クローズド懸賞?!」
「懸賞っていうか、この世に5個しか存在しないものを集めたら必ずひとつ願いが叶うんだから、どっちかっていうと先着1名様だけの“全プレ”って感じだね。」
「へぇ〜。」
「あと3個、僕と一緒に探そうよ。君、叶えたいこととかないの?」
「もしかして『カレーに困らない生活を送りたい』っていうのも叶うのかなぁ?!」
「・・・うん・・・叶うと思うよ・・・」
「じゃ行く行く!今から熊カレー大至急作っちゃうから、待ってて!」
「あの・・・待っててあげるからさ、そろそろボール返してくれないかな・・・」
願い事はひとつしか叶わない。
だがヨウイチは、カオルがちょっとぼ〜っとしているようだから、ボールが5つ集まった時点でカオルより先に願い事を唱えれば問題ないと企んだのだった。