「・・・へ?」
物置の奥に少し広まったスペースがあり、そこに男と猫のような可愛らしい生物が爆睡していた。
男は手にファミコンのコントローラを握り締めたまま。
テレビの画面は『ポートピア連続殺人事件』の迷路の画面が映し出されている。
猫のみたいな生物は、ガンダムのプラモデルを手に持ったまま。
「・・・まちるださぁん・・・むにゃむにゃ・・・」
3人は呆然とそのふたりを見下ろしていた。
「寝てるね〜・・・」
「おい、ヨウイチ、カオル。お前らこいつらが寝てる間にボールを探せよ。俺はこいつらを見張っとくから。」
「・・・僕たちが探してる間に『ポートピア連続殺人事件』の続き、しようとしてるでしょ?」
「・・・・・・」
「やっぱり。図星か。」
「これ見てよ〜、『魔界村』とか『ツインビー』とか『グーニーズ』とかもある〜♪」
カオルがファミコンソフトの山を次々と渡り歩きながら、タイトルを読み上げている。
「あっ、こっちにはねぇ、『高橋名人の冒険島』とか・・・うわぁっ!!」
カオルはたくさんのファミコンソフトに夢中で、足元に何かあるのに全く気づいてなかった。
それを思いっきり踏んでしまい、ファミコンソフトの山へ前のめりで倒れ込んだ。
がらがらどしゃ〜〜〜ん!
「うわっ、何だっ!何事だぁっ!?」
「ひぃぃっ!何?!」
カオルの叫び声とソフトが崩れる落ちる音にユウジとユタカが飛び起きた。
「アホだな・・・」
「つれて来るんじゃなかった・・・」
一方、テツヤとヨウイチは呆れて立ち尽くしている。
“あの〜・・・・”
どこからともなく声がする。
「え?今の誰の声??」
“こっちこっち。”
声のする方を5人で一斉に振り返る。
そこには大きな龍の顔。
長いカラダは物置の外にハミ出したままのようだ。
「神龍(シェンロン)!」
ヨウイチが声を上げる。
カオルの足元から龍の方へ向かって最後のボールが転がっていく。
それに呼び寄せられるように、3人が持っていた4つのボールが手元を離れ集まってゆく。
“あのさぁ、ここ、狭いしさぁ、クネクネしてるしさぁ、この態勢きついのよ。早く願い事ひとつ言ってくんない?”
神龍が鬱陶しそうに呟いた。
「現状以上の自分になって「カレー!「綺麗なオネエチャン「人間の男の人になって「女性恐怖症を「カレー!「に囲まれてウハウハな「もっと完璧な人間に「女の子に可愛いって「克服したい!「カレーいっぱい「一生を送りたい!「なりたい!「言われたい!「食べたぁい!」
“あぁっ、願い事1個しか叶えられないのに一斉にいろいろ言うなよ!何言ってるかわかんないだろ!もう知らんっ!”
ボンッと音を立てて、5人の姿は消えた。
“これでいいだろっ?!俺は帰るっ!・・・ったく何だよこの物置はよぉ・・・”
神龍はブツクサと不満を愚痴りながら帰っていった。