「たぶんこの近くにあると思うんだけど。」
レーダーを見ながら進むヨウイチの後ろを、テツヤとカオルがついて歩いていた。
「もうすぐ願いが叶うねぇ〜。か・れ・えっ!か・れ・えっ!」
「最後のボール持ってるのがとてつもなく強い相手だったらふたりとも頼むね。」
「お前4つめの時も何もしなかったじゃねぇか。お前もちょっとは闘えよな。」
「僕は交通手段と家と食事を提供してるでしょ。プラマイゼロだよ。・・・ん?この家の中かも。」
ヨウイチは立ち止まってレーダーから視線を上げ、目の前にそびえ立つ豪邸を見た。
「じゃ、入るか。」
「か・れ・えっ!か・れ・えっ!」
臆することなくずけずけと邸内に入っていくテツヤとカオルの後を追うような形でヨウイチも足を踏み入れた。
「ん?こんな豪邸の中に何でイナバ物置があんだよ・・・」
「ワケありげだね・・・」
「入ろう入ろう!」
「あぁ。行くぞ。」
テツヤが先頭に立ち、イナバ物置の扉をそっと開けた。
「・・・何だこりゃ・・・」
中の様子を見て唖然としているテツヤの脚の間をくぐって、カオルが物置の中に入った。
「うっわ、すっごぉ〜い・・・何ここ?」
ヨウイチも中の様子が気になったのか、テツヤの背中をぐっと押して物置に入った。
「ほ、ホントだ・・・」
足元には懐かしのおもちゃが散乱している。
「見て!こんなところに『なめんなよ』の免許証落ちてる!」
「すっげ・・・『ついでにとんちんかん』全巻あるぞ・・・」
「こっちはエポックの野球盤だ・・・しかもやった形跡がある・・・」
「あれ?何か聞こえてくる。どっかで聴いたことあるようなメロディだなぁ。」
「進むぞ。」
「うん。」
3人は忍び足で音がする方へゆっくりと歩いていく。
おもちゃの箱がうず高く積まれた間をくねくねと進む。
音が徐々に大きくなっていく。
「そろそろか?」
テツヤはそう言って1回深呼吸をしてから最後の角を曲がった。