「なんだったんだろう、あれ。悪夢か・・・?」
仏像が動き、話し、果てには歌ったりモノマネしたり、という超常現象に首を傾げながら、うわの空でお寺の石段を下っていると、
「うわぁっ!!?」
最後の段を踏みはずし、コロリ〜ンとズッコケてしまいました。
「あいたたたたっ、これは観音様の呪いに違いないな・・・・・・ん?」
若者はコケた拍子に何やら掴んでしまったようです。
「あっ、これってもしや!観音様が言ってた幸せにしてくれるモノなのか?!」
金の紐か何かだと思った若者は、慌てて手の中を見てみました。
が・・・
「くっそ・・・ただの藁じゃん・・・しょぼすぎだよ・・・こんなの持ってて幸せになれるとか、ありえない・・・」
手の中の藁を捨てようとしましたが、まさに藁にもすがる思いの若者は、とりあえずその藁を手に持ったまま歩き始めました。
道行く人の視線が気になり、観音様にイラつきもしましたが、藁をフリフリ振りながら歩きました。
するとその藁の先に、あぶがピタ〜ッと止まりました。
あぶといっても、ノンベエな野球選手では(略)
若者は藁を振り回しましたが、あぶは離れる様子がありません。
「こらっ!のけよ!シッ、シッ!」
「クスッ・・・」
追い払ってる瞬間を、すれ違った美女にしっかり見られたあげく笑われてしまいました。
この時ばかりは観音様とあぶを恨みました。
「これでどうだっ!」
怒った若者はそのあぶを藁の先っぽにくくりつけてしまいました。
「うん、ペットという扱いならおかしくは見えないだろうし、ちょうどいいかも。」
そういう問題ではないような気もしますが、冷静さを欠いてるようなのでそっとしておきます。
ペット的に藁に結んだあぶを手に歩いていると、その横を牛車が通りました。
「な、なんなんだ、そのあぶはっ?!」
牛車の後ろに乗っていた貴族の男が、若者とあぶを交互に指差しながら叫びます。
「ん?何って・・・ペットですけど?」
「ちょwペットっておまwwwテラシュールwwwww」
どうやら貴族のツボに入った模様。
あ、実物はそんなコトバを使うとは思えませんが、ギャグ&フィクションで言わせてみましたので、その辺は大目に(略)
「そこの君。そのあぶをくれないだろうか。旅の道中、ヒマでヒマで仕方ないんだが。」
「え?別にいいですよ?はい、どうぞ。」
若者は、あぶ&藁を貴族にあっさりあげてしまいました。
「おお、やった!サンキューサンキュー!よっし、このあぶに『あぶさん』と命名した!」
「そのネタ、もう上で出てますよ・・・?」
「何をぅ〜っ?!」
貴族はシュール好きでもありながら、ベタもイケるクチでした。
「・・・まぁいいや。お礼として君に梨を3つあげよう。」
「あ、ありがとうございます・・・」
貴族は若者に梨を手渡すと、牛車のドライバーにGOサインを出し、さっさと去っていってしまいました。