翌日、大学に向かって歩いていると、雄二が変な外国かぶれな感じの男を連れて向こうから歩いて来た。
「あっ!北山ぁ〜〜!!」
ブンブンと大きく手を振って駆け寄ってくる。
「・・・何?毎回でかい声で呼ぶの、やめてくれない・・・?」
「そう言うな、我が友よ!」
「だから友達じゃないから。」
「そいつ、誰?」
見ず知らずの男に「そいつ呼ばわり」されてしまった。
「この人は我が友、北山陽一。指揮者目指してるんですよ。」
「ゆっ、雄二、何でそれ知ってるの?!」
「学内で有名ですよ、教授にいきなり転科するって言っちゃったでしょ?」
人の噂って恐いな・・・どんな伝染病より広まるのが早いよ・・・
「ふぅ〜ん・・・指揮者、ねぇ・・・」
まじまじと俺の顔を見てくる男。
何の品定めなんだろう・・・
「失礼ですが・・・どちら様ですか?」
「あ、この人?・・・イェンス・レーマンさん。ドイツから来たんですって。」
男に代わって雄二が答えたが・・・
「ちょっと待って雄二・・・君、騙されてるよ・・・」
「えぇ?何で俺を騙す必要があるんすか?」
「見た目、めちゃくちゃ日本人だし・・・それに彼の名前・・・」
「北山、だっけ?君も来てよ。・・・酒井、行くぞ。」
「はいな〜。」
酒井に背中を押されるような格好で、男と一緒に歩いて行くことになった。