「・・・ん?」
知らぬ間に眠っていたようだ。
どうやらここは俺の部屋ではない。
体を起こそうとすると後頭部に鈍い痛み。
ひどい二日酔いだ。
普段酒は飲まないのに。
相当飲んだのだろうか。
頭を擦りながら、泥のように重い自身の体を無理矢理に起こす。
「な、んだ・・・これ・・・?」
自分が身を置いているのはゴミ溜めの中。
コンビニ弁当やカップ麺の空き容器、菓子パンやスナック菓子の空き袋が散乱している。
よく見ればグランドピアノらしきものもあるようだが、その上にもビールの空き缶が転がっている。
「ひっ・・・!?・・・何だよこれ・・・?
ひどすぎる・・・もう我慢できない・・・!」
足の踏み場もないこの部屋の、辛うじて「足の踏み場」と思えそうなところを選び、歩く。
そこら辺に放置されていたコンビニのビニール袋に、ザクザクとゴミを入れていく。
ゴミかどうかなんて選ぶ必要なんてない。ここにあるすべてがゴミだ。
何とか片付き始め、コタツからはみ出した汚い布団を掴んだ。
「ん・・・?何これ・・・?」
重い布団だ、ビクともしない、と思っていたものの正体は、人間だった。
人間が、綿入れの汚い半纏を着て爆睡している。
その寝顔をよくよく見ると、昨日下手なピアノを弾いていた男子学生だった。
「・・・むにゃ?
・・・・・・あ〜〜!!
北山ぁ!我が心の友よ!」
突然ムクリと起き上がり、握手を求めてくる彼を足蹴にして食い止める。
「何故俺の名前知ってるの・・・?」
「え〜?!昨日一緒に飲んだじゃないですかぁ?!ねぇ、北山?」
「・・・覚えてない・・・」
「やだなぁ!覚えてないんすか?俺ですよ!酒井雄二!ここで一緒に飲んだでしょ?」
こ、ここで?!!俺が?!!
「・・・帰る・・・」
「嗚呼っ、待ってくださいよ〜ぅ!」
追い縋る酒井とかいうコタツ男をもう一度蹴り倒し、逃げるようにその部屋を後にした。
バタン。
目の前に広がるのは見たことのある風景。
今出たドアのすぐ脇には、俺の表札が掛っていた。
「俺の・・・部屋の隣は・・・魔物の巣窟だったのか・・・」