話を聞くと、北山は俺の1コ下だったが、カッパの飼い主的には俺より先輩だった。
それに商売上手な彼は、カッパを飼うのに必要なグッズをあれこれと勧めてきた。
カッパに大人気の『尻子玉キャンディー』とか、実際それが本当に必要なものなのかどうか甚だ疑問ではあるが・・・
このようにアドバイスをくれる人と知り合えただけでも、相当心強い。
俺が北山と話をしてる間に、ウチのユタタンとカオちゃんは仲良くなったようで。
クチバシをカスタネットのように合わせてパコパコと鳴らしている。
「さっきからコイツらがやってるパコパコは何ですか・・・?」
「ああ、これですか?カッパ同士のコミュニケーションの一種ですよ。」
「へぇ〜・・・。結構耳障りなもんだな・・・。」
そんな話をしていると、ウチのユタタンが、カオちゃんが持っていたカッパ用オモチャを取り上げてしまった。
「くぁ!?」
「かぁ〜♪」
「おぁっ、こら、ユタタン!横取りしちゃダメじゃないかっ!」
今日飼い始めたばかりでまだちゃんとしつけができてないから、俺が怒ったところでユタタンは聞く耳を持たない。
「かぁっ!」
オモチャを取り上げられ怒ったカオちゃんがユタタンに向かって飛びつき、相撲の体勢に。
両者組み合った状態で約5秒。
「んかぁっ!!」
下手をとったユタタンがカオちゃんを投げ飛ばし、勝負あり・・・。
「ああっ、ユタタン何やってんだ?!カオちゃんに謝りなさい!」
「いいですよ。カッパは相撲取るもんですから。」
焦る俺とは対照的に、いたって冷静なままの北山。
負けたカオちゃんは、いじけて店の隅へ。
ユタタンはカオちゃんのオモチャを手にハシャいでいる。
「こらっ、ユタタン!そんなことしたら今日の晩ごはん抜きだぞ!」
「かぁ〜・・・?」
「ウチのユタタンがご迷惑をおかけしまして・・・ホントすいません・・・」
北山に頭を下げ、カッパの日常生活に不可欠な用具を買い揃え、帰宅することになった。
「あ、酒井さん。これ。」
「何ですか?」
「これ、発売されたばかりの『カッパクッキー』の試供品です。ユタタンにどうぞ。」
「あっ、ども、ありがとうございます・・・」
北山からクッキーを受け取ったユタタンは、それを手に部屋の隅でうずくまったままのカオちゃんの元へ向かっていく。
「・・・ユタタンどうした?食わないのか?」
「かぁ〜。」
ユタタンはカオちゃんにそっとクッキーを差し出した。
カオちゃんがそれを受け取り、半分に割って片方をユタタンに返した。
2匹並んでクッキーを食べる姿に、俺はカッパの知能の高さに感心するとともに、カッパを飼ってよかったと思うのであった。