予定時刻を10分ほど過ぎたものの無事終点駅へと到着した。
3人がプラットホームに降り立ち、乗客や乗務員から感謝の言葉を受けていると、人垣の向こうに輝かんばかりに美しい女が3人を見つめていた。
そして誘うように目配せして、去っていってしまった。
「今さぁ、ぜぇったいオレを誘ってたよね〜?」
「何言ってんすか?オレですよ!」
「バカだなぁふたりとも。ボクに決まってるでしょ。」
「いや、オレだって!」
「アンタじゃない!」
「だからボクだって言ってるのに。」
3人は礼を言う人々を掻き分け、口々に言い合いながら女の後を追った。
女も時々後ろを振り返って3人に意味深な笑みを送ってくる。
そのたびに「ほらやっぱりオレを見た」「いや違う、ボクだ」と小競り合いをしながら、3人はなおも女の後をつけていった。
女は軽やかな足取りで大きな建物の中へと入っていった。
3人も特に気に留めることもなく、同じく建物の中へと足を踏み入れた。
女は長い廊下の途中でぴたりと足を止め、そこにあったドアをノックした。
『はい。』
「お連れしました。」
『入れ。』
女はドアを開け、3人の方を振り返り、にっこりと笑った。
「どうぞ、お入りください。」
「はへ?」
カオルは意味不明の言葉で返事した。
ヨウイチがユウジの背中を押し、ユウジがカオルの背中を押し、まるでグレーシートレインのように3人はおっかなびっくりで部屋の中へと入っていった。
中には先程の女と、男がふたり。
ひとりの男は背が高く髪が長め。
もうひとりの男は小柄で金髪。
共に丈の長いコートにズボンという紺色の制服に身を包んでいた。
「さすが、色仕掛けが一番手っ取り早いな。お前はもう下がっていいぞ。」
長身の男が女に指示すると、女は一礼し退室していった。
「ありがとね〜」
金髪の男が手をグーパーして女を見送る。