錬金術というものがごく当たり前に使われている世界が舞台だ。
錬金術というのは、ある物質を用いて全く別の物質を作り出す術である。
とは言え、何の変哲のない石ころをダイアモンドに変えることはできない。
なぜなら錬金術は“等価交換”が基本だからだ。
先出の兄が“等価交換”という言葉を説明する際に、いつも使っている例を下記に引用してみる。
『パチンコの貸し玉料金は1個4円なんだけど、景品交換所で換金する際は通常それ以下の金額になるんだよね。例えば1個3円とか。
けど稀に等価交換できる店があるんだ。等価交換の店なら、換金する際も1個4円。つまり等価交換ってそういう意味。
あっ、でも等価の店はたいてい設定低くてあまり出ないようになってるから気をつけなよ。』
・・・簡単に言うと、同じ重さ・同じ性質・同じ価値同士でないと作り変えることはできないという意味だ。
話を元に戻そう。
とある町に、カオルとユウジという幼い兄弟がいた。
母親を亡くした彼らは、錬金術を用いて母親を甦らそうと考えた。
一度死んだ者を生き返らせるのは自然の原理に逆らうことであり、錬金術を行う上でその行為は最大のタブーだとされていた。
兄弟は母をどうしても甦らせたい一心で、その危険な領域に足を踏み入れてしまった。
禁忌を犯し人体錬成を行なった結果、失敗してしまい、そのうえ代価として兄のカオルは左脚を、弟のユウジは全身を失ってしまった。
そんな状況下でカオルはユウジの魂をなんとか錬成し、その場にあった鎧に定着させたが、その代価で右腕をも失ってしまった。
『なんだよ〜?!ユウジ、なんか変なモノ混ぜただろ〜?!』
『あ、アンタだって何か混ぜたんじゃないか?!アンタのことだからカレーとかさ〜!』
『・・・あはっ。』
『笑い事かぁっ!!』
『・・・ごめんなさい・・・』