「試験官は俺とこいつでやる。俺はテツヤ。俺も国家錬金術師。」
テツヤと名乗る長身の男は、白い手袋をつけた手でパチンと指を鳴らし、指先に小さな炎を灯した。
その火でテツヤと金髪の男がタバコに火を点けて一服する。
「ボクはユタカ。テツの部下だよ。ばきゅ〜ん☆」
ユタカと名乗る金髪の男がタバコを持ったまま銃を構え、ウインクとともに射撃のポーズをした。
「お手やわらかに〜。・・・で?どんな試験?」
「水着審査。」
「はぁ?!」
「嘘。」
「よかった〜!ホントに水着審査あったらどうしようかと思った〜!」
「水着で実技試験ね。」
「はぁ〜?!」
「やります!」
またも後ろからカオルの背中を押し、ユウジが代弁する。
「ちょっと待て!何で勝手にお前が答えちゃうんだよ!第一、水着なんか持ってないし!」
「カオルさぁ〜ん?あなた錬金術師ですよねぇ?水着ぐらい作れるんじゃないですかぁ〜?
もしかして錬金術師っていうの、ホントは嘘なんじゃないんですかぁ〜?」
ユタカが挑発する。
「むっ・・・できるよぉ!それぐらいっ。」
カオルは窓際にツカツカと歩いていくと、ポンと手を叩き、カーテンに手のひらを押しつけた。
カーテンは赤と白の横シマの半袖・膝丈のつなぎの水着に姿を変えた。
「あ、言い忘れてたけど、水着はレインボーのビキニパンツね。」
「はぁ〜??!・・・・・・帰ります・・・」
ドアに向かって歩いていくカオルをユウジとヨウイチが通せんぼをする。
「ダメダメ、帰っちゃ〜!」
「もうっ、知るかっ!」
カオルはそう言って半ばヤケクソでシマシマ水着に手を当て、レインボーのビキニパンツに変化させた。
「で?」
「へ?」
「・・・・・・」
「・・・ここで・・・?」
「♪ぱぱっぱぱっぱっぱ」「♪じゃまじゃまっ」
「4人でハモるなっ、くそっ!」
カオルがキレ気味にコートを脱ぎ、床に投げつけた。
「はい、合格。」
テツヤが、役者のオーディションを審査する演出家のように灰皿にタバコをもみ消しながら結果を伝えた。