将軍のわがままに家来はまたまた街へ向かうこととなった。
暴れん坊将軍はもう飽きちゃったので「♪め〜ぐり逢〜い紡〜ぎ〜」と口ずさみながら馬を走らせていると、目的の寺に到着した。
「すいませ〜ん。誰かいませんか〜?」
家来が境内に響き渡るようなクリスタルボイスで呼び掛けると、ロン毛の住職が現れた。
「んぁ?なに?葬式?葬式?」
「アンタら葬式楽しみにしすぎだよ!」
「わかってないなぁ、お前。葬式は着飾っていけるしギャラもいいんだぜ?葬式から始まる恋もあるっつ〜ことだよ。」
「そんな『Kissから始まるミステリー』みたいな素敵な言い方すなっ!」
「んだよ。葬式じゃねぇんならとっとと帰れ。」
「アンタ、ホントに坊主か?!資格剥奪されちまえ!『日本坊さん協会』から破門されちまえ!」
「そんな協会ないも〜ん。」
「あ〜!もういいもういい!アンタに用事はないんだよ!
アンタんとこの小坊主に用事があって来たんだ!さっさと連れてきてもらおうか!」
「ちっ。金になんねぇ客だな・・・」
住職はやっと本堂の中に入っていった。
そして入れ違いに、安岡屋に来ていた少年が現れた。
「はい?僕に何の用ですか?」
「手短に言う。将軍さまが君をお待ちだ。」
「へぇ〜、将軍さまがぁ〜・・・・・・って、えぇぇぇ〜〜〜!」
「はい、乗った乗った!」
家来は、サーフィンボードを小脇に抱え美女から美女へ渡り歩く渚のシンドバッドのように少年を抱えて、馬に飛び乗った。
「あ〜れ〜〜!今、晩ごはんの仕込み中だったのにぃ〜!和尚さまに怒られる〜!」
「んなのは帰りにデパ地下寄って惣菜買ってあげるから心配するな。」
「あっ、じゃあ大丈夫だね〜。」
少年は家来に抱えられたままホッとした表情を浮かべた。