「頼もう!」
一難去ってまた一難。
男の子の目の前に、先ほどのトラと同じぐらいの大きさのトラが現れました。
「ひぃぃっ、またでた!!」
「どうも、わたくし顔剃りのトラと申します。・・・お前を食べるぞ食べるぞーーー。」
トラはちょっぴりお調子者で、わざと棒読みな感じで男の子を脅してみました。
「ちょちょちょっ、ほんとだめです!」
男の子はトラのわざとらしい演技に気づかず、本日2度目の許しを乞いました。
「じゃ、じゃあさ、何かくださいよぅ。」
トラは自分より年下の男の子(not キャンディーズ)に対し、なかなか礼儀正しい口調で頼みました。
「・・・なにかあげたら、ほんとにたべないでくれるの??」
男の子は半泣きで聞き返します。
「ああ、神に誓って。」
トラは胸の前で十字を切り、両手を組みました。
「・・・じゃあ・・・このくつあげるからぁ〜・・・」
見るからに高そうな、ピカピカのエナメルの靴を見て、トラは考えました。
『こんなちっさな靴じゃサイズが合わんじゃないか!・・・ん、待てよ?この靴を売れば、猫が買えるんじゃないか?!』
このトラ、ネコ科のくせに猫が好きでした。
そのうえ、猛獣のくせに、食べるためではなく飼うための猫が欲しくて欲しくて仕方ありませんでした。
(さかなクンなんかは、魚が好きだけど普通に魚食べちゃうんですけどね?)
「よし、乗った。それで手を打とう。」
男の子は靴を脱いで、トラに手渡しました。
「はい、どうぞ・・・」
「いやはや、すまんな。・・・いい夢見ろよ!あばよ!」
トラはご機嫌で「♪道なき道へ〜分け入る人〜も〜あ〜る〜」と歌いながら森の奥へ消えて行きました。
「またたすかった・・・」
男の子はそう言って再び安堵しましたが、男の子と靴を奪い去っていったトラとのやりとりを見ている者がいました。