「王様っ!」
「あ、いつもの猫じゃ〜ん。どうも〜。」
「実は、ゴス侯爵が池で水浴びをしておりましたところ、何者かに服を奪われてしまいまして・・・。」
んなムチャクチャな・・・誰が信じるんじゃい・・・
淀みなくウサンくさいウソをつく猫に呆れた三男は、困った表情を浮かべたまま様子を窺いました。
「あらぁ、それは気の毒に。」
深酒が王様の思考回路を鈍らせているのか、猫のウソをそっくりそのまま信じ込んでしまいました。
三男の心配は杞憂に終わったようです。
「あっ、そうだ。俺の余ってる服でよかったらあげるけど?いる?」
「本当でございますか?!ありがとうございます!助かります!」
「い〜え〜。どういたしましてぇ〜。」
王様から高級な服と、おまけにタオルを受け取った猫は、王様に向かって深々とお辞儀をし、三男の元へと逆戻り。
三男を連れて、木陰へと隠れました。
「はい、これ着て。」
「お前は恐ろしいヤツだな・・・」
「君にはまだまだやってもらうことがあるんだから早く着てよ。ほら、モタモタしない!」
「ロサ・モタ?」
「コーホー・・・(殺気)」
「すいません・・・」
猫は、格好だけはすっかり位の高い人物に変身した三男を王様に引き合わせました。
「君がゴス侯爵?」
「え?あ、はぁ、まぁ、そのようなカタチになっておるようです、はい・・・」
「いつも野ウサギありがと〜。」
「へ?あ、い、いえ、どういたしまして・・・。」
ものすごくぎこちないやりとりでしたが、深酒が王様の思考回路を鈍らせているのか、三男のコトバをそっくりそのまま信じ込んでしまいました。