『まっ!てつや君たらこんなかわいいネズミちゃんに何てことするのぉ〜?!』
エリザベスの右フックがてつやのテンプル(こめかみ)に炸裂。
『んぎゃぁっ!』
吹っ飛んだカラダは隣のベランダの境にある柵に激突した。
『ネズミちゃん、大丈夫だった?!』
エリザベスは、てつやの目の前で2匹のカラダに乗せられたウニとカレーを舌で綺麗に舐め取った。
『きゃはは!』
『くすぐったぁ〜っ!』
てつやは柵にもたれかかり、3匹が展開している衝撃的映像を激痛と悲しみとジェラシーで潤んだ瞳で見つめていた。
エリザベスは、そんなてつやの姿が全く目に入っていない様子で、干瓢を噛み切って2匹を救出した。
『ネズミちゃん、これ一緒に食べましょ?』
『ホント?!』『わ〜い!』
『いただきまぁ〜す♪』
『いただきま〜す!』
実はこのエリザベス、ウォルト・ネズミーの代表作であるミッキーマウチュのコレクターであることなど、てつやは知る由もなかった。
『ネズミちゃんたち、名前何て言うのぉ?』
『俺、カオル〜』
『俺、ユタカだよ〜』
『カオル君とユタカ君かぁ〜。かわいいねぇ〜☆』
『いやいや、とんでもない!』
『エリザベスちゃんの方が断然かわいいよ〜?』
初対面とは思えない和気藹藹とした雰囲気の3匹。
一方のてつやは柵にもたれたまま、「あしたのジョー」の矢吹丈のように白く燃え尽きていた。