そんな時、酒井の部屋のベランダを1匹のペルシャ猫(♀)が優雅に通り過ぎた。
『あ!エリザベスちゃん!』
てつやが目をハートにしてベランダにすっ飛んでいく。
このペルシャ猫、この界隈の雄猫に大人気のかわい子ちゃんなのだ。
『エリザベスちゃ〜ん☆今食事にしようと思ってたんだよ。いっぱいあるし、一緒に食べない?』
『ホントぉ?!』
『ちょっと待ってて。持ってきてやっから。』
『うん!』
かわい子ちゃんとはいえ、他の雌同様グルメには目がないエリザベスは、ものすごいスピードで即答した。
てつやは部屋に戻り、サラダとピザと、メインディッシュである2匹の乗った皿を掴んだ。
『あ〜、アンタあの娘に気があるんだろ〜?』
ユタカが持ち前の感の鋭さで核心に迫る。
『あったりめぇだろ。あんなかわい子ちゃん、みすみす見逃すワケねぇだろ?
お前らを“エサ”にエリザベスちゃんを食って、その後でエリザベスちゃんと一緒にお前ら“餌”をゆっくり食うんだよ。』
『う、うまいこと言うねぇ〜・・・』
『“俺らの前でする”だなんて“性癖レベル”が高すぎて俺には理解できないなぁ。』
カオルは変なところで感心した。
『んなこたぁどうでもいいんだよ!どっちもおいしくいただければ俺はそれで満足なんだよ!』
『んまぁっ、欲張りだこと!』
ユタカが呆れたように声を上げた。
『俺は食欲と性欲だけで生きるケダモノなんだよ!』
『そんな張り切って言う言葉でもないし、猫なんだからもともとケダモノじゃんか。』
カオルがもっもとな意見を言う。
『あ〜、もう黙れ。餌のくせに。』
てつやはトレイに食べ物(カオル・ユタカ含む)を乗せ、エリザベスの元に運んでいく。
『はい、どうぞ。食べちゃって☆』
エリザベスの肩を抱こうとする手をちょっとだけ我慢して、トレイを差し出した。