「ザッ、ザッ、ザッ、ザッ・・・」
曲がり角も無視してとにかく直進、川も池も山も道なき道もお構いなしにまっすぐ突っ切っていく3匹。
そんな中、進行方向のド真ん中で、ニワトリが切り株に腰かけ、ウクレレを爪弾いている姿が見えました。
若干ぎこちなく聴こえる音色はご愛敬です。
行く手を阻むニワトリ。(本人はそんなつもりはさらさらない)
しかし、そんなことは3匹には全く問題ありませんでした。(だって直進行軍の真っ最中だから)
「ザッ、ザッ、ザッ、ザッ・・・」
「♪遠い〜、かな〜たまで〜行く〜、やくそ〜くの・・・って、わぁっ?!なになになに?!」
ガツ〜ン!!
3匹に突進されたニワトリは軽く吹っ飛びました。
「いっ、てててて・・・な、何だよぅ?!痛いだろ〜ぉ?!」
ニワトリがプンスカ怒ります。
まぁ、当然といえば当然ですよね・・・。
「ちょっと何なんだよ〜、こんなとこでウクレレなんか弾いちゃってさぁ〜、ジャマでしょ〜?」
「『こんなとこ』って何だよ〜ぉ?!こんな森のはずれにヒトの行き来なんてねぇよ!」
ニワトリは、動物メインの物語なのに人間目線の反論をしました。
「で?なんで昼の日中(ひなか)から仕事もしないでウクレレ弾いて歌ってんだよ?」
犬は自分のことは棚の上にあげてニワトリに尋ねます。
ニワトリはそんな棚上げに気づくこともなく語り始めました。
ニワトリは、ニワトリのくせに目覚めが悪く、毎朝定刻に鳴くように主人に頼まれていたにもかかわらず寝過ごすことが多々ありました。
主人は連日連夜、深夜までテレビゲームに明け暮れており、ニワトリの声なく朝目覚めれるワケがありません。
ニワトリ同様寝過ごした主人は、梨の仕入れが遅れて先方からこっぴどく怒られたり、デートに遅れて彼女に思いくそ怒られたりしました。
「ったく、・・・カレーうどんの具にしてやろうか・・・」
主人がものの例えとして呟いたヒトコトを、(ニワトリなのに)鵜呑みにしたニワトリ。
食われてしまっては かなわない、と家から逃げ出してきたのでした。
「理由もチキン・・・!!ははははっ!」
何やらツボに入ってしまったらしいロバ、ハラを抱えて崩れ落ちました。
「え?何?英語ではチキンだけど。何??」
ニワトリはロバが笑っている理由がわからず頭を傾げています。
「まあ、たしかにうまそうではあるな。」
「フォアグラ的な意味でもね。ってニワトリだけど。」
もともと肉食である犬と猫はヒソヒソとそんな会話をしましたが、ロバの笑い声も幸いして、ニワトリの耳には届きませんでした。
ロバは笑いながらニワトリに話しかけます。
「ニワトリさんもどうです?今から東京行って音楽・・・」
「行く行く!カレー屋いっぱいあるし、いいじゃん東京!」
・・・ですよねぇ〜。
そんなワケで、東京に向けての直進行軍が再開されました。
こういうノリがキライじゃないニワトリは、すぐに理解し、3匹と同じように颯爽と最後尾を歩きました。