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ロバがほぼノープランで決めた目的地はまだまだ先。
エサを抜かれてハラペコのロバと、まだまだ酔っぱらいなうな犬は、ゆっくりのんびりと進んでいきます。

「♪どれだけぇ〜、歩っけば〜ぁあっ、いいかなんて〜ぇ、わか〜らな〜いけど〜おぉ〜」
「ホントにね。」

2匹が歌ったりしゃべったりして歩いていると、向こうからヴィクトリー・ウォークで歩いてくる猫と出会いました。

「・・・すっげぇな、マジ・・・」
「ん?何?」

小声で呟いたのが猫の耳に届くとは思わなかった犬は、「い、いや・・・な、なんでもねぇよ・・・!」とごまかしました。

歩みを止めた猫に、ロバが丁寧な口調で「こんな何もないとこをおひとりで。どうされたんですか?」と問いました。

「えっ、聞いてくん、くれんの?!もうさ、誰かに、いた、言いたくて言いたくて仕方なかったんだよ〜!聞いて聞いて!」

猫が急にプリプリと怒り出し、少々オーバーな口調で話し出しました。
興奮のせいか、ところどころカミカミです。

「あ、うん・・・わかった、聞く、聞くからちょっと落ち着いて・・・」

(猫だけど)豹変した猫の勢いに呆気にとられたロバ、丁寧だった口調をやめて猫に説得しました。
その言葉に、猫はようやく落ち着きを見せ、コトの経緯を話し始めました。

猫の飼い主は、猫全般、猫という猫なんでもかんでも大好きで、とにかくこの猫を溺愛していました。
「ほらっ、エサの時間だよ〜。『♪ミケのごはんもごちそうニャン☆』なんつってな!」・・・などと言いながら、エサとしてウニを与えたりしていました。
大好物のウニが食べられるということもあり、当初は喜んでいた猫でしたが、困ったこともたくさんありました。
本能によりネズミを捕まえただけなのに、「ああっ!ケガしたらどうするんだっ!アブないことしちゃダメって言ってるでしょうにっ!!」と小言を並べます。
度が過ぎた過保護がだんだんわずらわしくなった猫は、ついに決断を下しました。

「そんなワケでさぁ〜、家、出てきちゃったワケ。」
「え・・・でもさ、そんなに溺愛してたのにが君出てきちゃったら、飼い主さん落ち込んじゃうんじゃない?」
「いいのいいの!あの人ねぇ、猫だったらな〜んでもいいんだから!」
「そ、そんなもんなのか・・・?」
「たぶんもう次の猫飼ってるはずだよ。大丈夫、大丈夫!」

猫は、ヘでもねぇよってカンジでイ〜イ笑顔を浮かべています。

「・・・そ、そうなの・・・じゃあ、君も一緒に行く?今から東京行って音楽でもしようかと思ってるんだけど・・・」
「音楽?!東京?!行く行く!」

猫はイチもニもなく即答で参加表明しました。

ハラペコ度がさらに進んだロバ、ちょっと酒が抜けてきた犬、独特の気取った歩き方をする猫は、何もない田舎道をのんびりと進みます。

「・・・あのさぁ〜、ヒマだからさぁ、『直進行軍』でもしない?」

退屈のあまり猫がどうでもいい提案をしました。

「ああ、『魁!男塾』の?」

ロバはすぐ理解しましたが、犬は「は?何それ?」と首を傾げます。
青春時代はサッカーに明け暮れていたようで、そっち方面はあまり詳しくないようです。

猫が棒の切れ端を拾って立て、東京方面へ向けてわざとらしくないカンジで故意に倒しました。
そして背筋を伸ばし、男塾名物直進行軍を始めると、クールに見えて意外とノリがいいロバも後を続きました。

「ザッ、ザッ、ザッ、ザッ・・・」

犬はワケがわからぬまま、見よう見マネで一番後ろをついていきます。


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