村上さんは表情ひとつ変えず、歩みを進めていく。
俺は堪らず声を上げた。
「俺・・・今の仕事が向いてないとかじゃなくて、きっと仕事というもの自体が向いてないんだと思うんです・・・」
村上さんが足を止める。
俺は言葉を続けた。
「忘れっぽいし、すぐ大事な物なくすし・・・ミスばかりして。
会社は手を汚したくないから、俺が自分から辞めるって言い出すのを待ってるんだろうね・・・。
会社のためにも、辞めた方がいいのかな・・・」
「お前も何ガキみたいなこと言ってるわけ?
学校じゃねぇんだから、何でもかんでも上の考えどおりに動かなくてもいいんじゃねぇの?
お前くやしくねぇのかよ。会社側からいらないって思われたら、逆に必要だって思われるように頑張れよ。
頑張って見返してやりゃいいんだよ。挑みもせずに逃げ出すようなみっともないマネすんじゃねぇよ。」
「村上さん・・・」
・・・ガツンと頭を殴られたような気分になった。
村上さんの言うとおり、1回の挫折で逃げ出したら、この先ずっと逃げの人生になるような気がした。
「村上さん・・・俺、頑張ります。自分の価値と居場所を見出せるように頑張ります。」
「おぅ。」
村上さん、恐い人だと思ってたけど、ちょっと見直したな。
「ところでさぁ。」
「な、何でしょうか?」
「お前はムケてるわけ?」
「はぁ〜〜?!!」
こんな人、一瞬でも見直してしまった俺はバカだ・・・