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「あっ、あの、安岡さぁん!仕事何したらいいですか?」
「ないよ。」
「え?」
「ない。」
「Pardon?」
「だ〜か〜ら〜、な・い。な〜い〜のっ。Understand?」
「・・・・・・え〜〜〜!!」
「反応遅っ!」

彼らは仕事しないんじゃない。
仕事が与えられていないのだ。

「もしかして・・・左遷・・・?」
「え、もしかして今気づいたの!?」

マぁ〜ジぃ〜でぇぇぇ〜〜?!
・・・ショックだ・・・ショックのあまり、俺は椅子に崩れるように腰掛けた。

安岡さんは自分の席へ戻ると、パソコンを操作しながら携帯を取り出し、電話をかけ始めた。

「あ、もしもし?安岡で〜す。あのさ、ミモザ製薬の株、買い増しで・・・」

仕事中に株かよ!
やっぱり俺以外の奴みんなおかしいよ!
俺以外、左遷されて当然って感じだもんな。

 

プルルルル〜♪

「黒沢さぁ〜ん、電話出て〜。アナタだけ今何もやってないでしょ〜。ほら早くっ!」

酒井さんが顔も上げずに頼んでくる。
『何もやってない』って言い方、なんだかとても腹立つんですけど・・・

「はい、営・・・じゃなかった・・・庶務五課黒沢でぇす。」
『人事部ですけど〜、蛍光灯切れたんで換えてもらえます〜?』
「はぁ・・・」
『?・・・じゃ、お願いしますね〜。』

受話器を置く俺。

「あの〜・・・人事部から、蛍光灯が切れたって・・・」
「今回村上さんの番ですよ〜!」
酒井さんが呼び掛けるも、村上さん反応なし。
そりゃそうだろ〜、俺のとこまでヘッドホンの音、漏れてきてるもんなぁ。

「あ゛〜っ、もぅ!」
酒井さんが『♪てぃろりん』とポーズボタンを押し、席を立つと、村上さんのヘッドホンをスポッと外した。

「・・・あ゛ぁ?!」
酒井さんを見上げ、睨み付ける村上さん。
めっちゃ怖っ!眼光鋭っ!

「人事部で蛍光灯切れだそうですよ。頼んますよっ、もぅっ。」
酒井さんは、村上さんの凄味も屁でもないって感じで受け答えしている。
すごいなぁ・・・慣れちゃってるのかなぁ。

「はぁ〜あ・・・だっるぅ〜・・・」
大きなため息ひとつ。
『だるい』ってあんた、さっきから仕事してないじゃん。

部屋の片隅に置かれた脚立を担いで蛍光灯を握ると、俺の方を振り返った。

「おぅ、そこの新しいの。」
お、俺のこと?
『新しいの』って・・・あなたヤクザですか。
「は、はいっ、なんでしょう?」
「行くぞ。」

村上さんはそう言うと俺を置いてスタスタ部屋を出て行った。

「あっ、はいっ!」
俺は慌てて村上さんの後を追いかけた。


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