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帰宅早々、黒沢は幹部クラスの4人を集めた。
皆、黒沢よりもはるかに年上で、見た目にも凄味と貫禄を兼ね揃えている。

「三木。五味の具合はどうだ?」
床の間の前の上座に座った黒沢は、幹部のナンバー3である三木に尋ねた。

「肋骨が何本か折れて病院で寝てます。まぁしばらく出れんでしょうな。」
「あいつはちょっと迂闊なとこがあるからな。今回のことで反省してくれればいいんだがな。」
三木の説明に、ナンバー2の二村が大きなため息を落とした。

「四宮、病院の五味に護衛をつけろ。くれぐれもカタギの方々に迷惑がかからないようにな。」
「へい。」
黒沢は、五味の兄貴分である四宮に指示を出した。

「お言葉ですが。」
幹部ナンバー1の一枝が重い口を開いた。

「何だ?一枝。」
「組長、いつまでカタギの仕事を続けるおつもりですか。こんな一触即発の時に歌なんざ歌って・・・」
「兄貴っ?!」
一枝の言葉に他の幹部が青ざめた。

「一枝。俺がカタギの仕事を続けるというのは、組長を継ぐ時の約束だったはずだ。
俺がこっちに専念していないことで、お前たち幹部に負担をかけてしまって申し訳ないと思っている。
だが組長を継いだからには、この組を、お前たちを、組の奴らみんなを、どんなことがあっても守り抜くつもりだ。
誰ひとりとして死なせやしない。だからお前たちも俺を信じてついてきてくれ。」

一枝は、迫力に欠ける口調で語る黒沢の眼の奥に、切れ味のよいナイフのような非情で冷酷な鋭さを感じた。
その眼差しは先代の組長の眼とそっくりで、一枝は背筋を凍らせた。

「・・・わかりました、組長・・・」
「じゃあそういうことだから。お前たちも気をつけてくれ。以上だ。」

黒沢は立ち上がって、広い畳の間を後にした。


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