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翌日、安岡は話の輪の中心にいた。

「昨日、ヤクザの抗争に巻き込まれちゃってさぁ!」
メンバーに昨夜自分の身に起こった出来事を興奮気味に話している。

「チンピラかなぁ、3人組に囲まれてさぁ、『殺される!』って思ってたら、どこかの組長さんが現れて、バンバンバーンって、たったひとりでやっつけたんだよ!
まさか日本で銃声も聞くなんて思ってなかったよ!」

「じゅ、銃声!?」
それまで静かに話を聞いていた北山が慌てたように聞き返した。

「うん。『バァーン!』ってすっごい大きな音でさぁ、しばらく耳鳴りしてたよ!
組長、相手が撃つより先に撃っちゃうんだよ?!かっこよくない?」

「話を聞いてる分にはおもしろいけど、チンピラに囲まれたり近くで銃撃戦とかされるのは御免だなぁ。
流れ弾が当たらないとも限らないし。」
酒井が複雑な表情を浮かべる。

「たしかに恐かったし、もう二度とあんな目に遭いたくないけど、あの組長さんにまた会いたいなぁ。
真っ暗な道だったし、サングラスかけてるみたいだったから顔とか見えなかったんだけど、めちゃくちゃ渋くてかっこよかった!」
安岡が目をキラキラさせている。

「俺よりかっこいいグラサンがいるとは・・・」
村上が悔しそうに言った。

「うん、てつよりも断然かっこいいから・・・『ここはカタギのアンタが来るとこじゃない。』ってさ!」
安岡は渋い顔と渋い声を作って再現してみせた。

「・・・顔見えなかったんでしょ?」
北山が安岡に聞き返す。

「うん、見えなかった・・・けど、きっとこんな感じだったはず!・・・『早く帰った方がいい。』・・・くぅ〜っ!しびれるぅ〜!」
「ダメだこりゃ!すっかりヒーロー物に憧れる子供みたいになっちゃって。」
黒沢が肩を竦めて笑う。

「言っとくけどなぁ、さっきからうれしそうに真似してるけど、お前全く渋くないからな!」
安岡の物真似がよっぽど鬱陶しかったのか、酒井が噛み付かん勢いで言った。

「『ここはカタギのアンタが来るとこじゃない。』」
安岡がもう一度真似をする。

「『ここはカタギのアンタが・・・。』」
実際に組長を見たわけでもないのに、村上も負けじと真似をする。

「あ〜!もういい!うっさい!」
酒井が頭を抱えて叫んだ。

「『ここはカタギのアンタが・・・』」
「『早く帰った方がいい。』」

「もうええっちゅうに!」
安岡と村上の組長物真似合戦に酒井の怒りがますます爆発し、黒沢と北山はそんな3人を見てゲラゲラ笑った。


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