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“た・・・助かった・・・”
極度の緊張から解放された安岡は腰が抜けたようにぺたりと座り込んだ。

救世主は、道路の上に倒れたままの男の元へ向かった。

「・・・大丈夫か?」
救世主はドスの効いた貫禄のある声ではあったが、どこか優しさを感じるような口調で、男に声をかけた。

「く、組長・・・すいません・・・お手を煩わせてしまって・・・」
弱々しい声で救世主に詫びている。

“救世主、組長だったんだ・・・どうりで強いと思ったんだよ・・・”

ぽけ〜っとその様子を見ていた安岡に向かって、組長が歩いてきた。

“こ、こっち来た?!”なんて思っていると。

「大丈夫か?」
組長が安岡に対しても同じ言葉を投げ掛けてきた。

礼を言わなきゃという気持ちと恐いという気持ちがゴッチャになって、またまた言葉が出ない。

組長は、いつの間にか落としてしまっていた本と、もはや原型をとどめていない携帯を拾って安岡に渡すと、安岡の腕を引っ張って立たせた。

「巻き込んでしまってすまない・・・けどここはカタギのアンタが来るとこじゃない。早く帰った方がいい。」

組長はそう言い残すと、横たわったままの男の元へ戻っていった。

安岡は組長に頭を深く下げた後、走って去っていくことしかできなかった。


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