「何だおらぁ!」
「死にてぇのか?!」
男たちの標的が安岡へと変わる。
安岡は、3人組にあっという間に囲まれてしまった。
目の前に立った男が安岡の手から携帯を取り上げると、それを地面に叩きつけ、思い切り踏みつけた。
派手な音を立て、携帯は粉々に砕け散った。
喉が異常に乾いて、助けを呼ぶ声も許しを乞う声も全く出ない。
こんな寒い季節なのに、背中を汗が伝ったのがわかった。
“俺も・・・殺される・・・?”
そう思った瞬間、安岡の背後で男の呻き声があがった。
安岡が振り返ると、ちょうど自分の後ろに立っていた3人組のうちのひとりが、新たに登場した男に腕をひねり上げられているのが見えた。
その直後、背後の男は頬に強烈なパンチを食らい、コンクリートの地面に転がった。
「テメエ!」
「この野郎っ!!」
残りのふたりが仇を取るべく、この救世主とも言える男に向かって突進していく。
救世主はそれをひょいと難なくかわすと、片方の男の背後に回って脇腹を力強く蹴り上げた。
そして、その隙を狙って後ろから迫ってきたもうひとりの敵の鼻を、振り返りざま殴り付ける。
「ふざけやがって!」
3人組の最初にやられた男が胸ポケットから拳銃を取り出した。
バァーン!
寒い夜の静寂を切り裂くように銃声が響く。
「ぐぁっ!」
意外にも、声をあげたのは拳銃を取り出した張本人。
手から構えていた拳銃が零れ落ちる。
恐る恐る安岡は振り返った。
相手が照準を合わせて引き金を引くよりも早く、救世主が敵の肩を撃ち抜いていたのだった。
「ひぃっ!逃げるぞ!」
3人組はお互いの体を支え合い、転がるように逃げて行ってしまった。