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黒沢はふらりと立ち上がって、激痛にジタバタと藻掻く幹部を踏み付けた。

「俺が・・・手や脚しか撃たねぇのは・・・つまんねぇことで人殺ししたくねぇからだ。
いくら俺の命を狙っていた相手だとしても・・・送るのは天国でも地獄でもねぇ。生き地獄だ。
俺を狙うんなら・・・何度でも狙えよ。何度でも、何度でも味わわせてやるよ・・・地獄じゃなくて“生き地獄”を、なっ!」

黒沢は、ついさっき自分が撃った幹部の足首をぐっと踏み付けながら言った。

聞こえているのか聞こえていないのか、幹部はただ喚きながら許しを乞いながら、何度も頷いていた。

黒沢は幹部の持っていた銃を遠くに放り投げた後、安岡に言った。
「安岡・・・帰ろう・・・」

呼ばれた安岡は、黒沢の体を支えてやり、廃屋を後にした。

入口を出たところで、黒沢は「お〜い。迎えに来たよ〜。」と呼び掛けた。
その声に応えるように、建物の横手から四宮の娘が走り出てきた。

「おじちゃ〜ん!」

後からこの場に到着した安岡は、夜遅くにひとりで現れた少女に目を丸くして驚いている。

「いい子にできたね・・・えらいね・・・」
黒沢は赤く染まった手で四宮の娘の頭を撫でてやった。

すべての仕事が完了した安堵からだろうか、黒沢の体から力が抜ける。
膝をがくりとつき、その場に倒れた。


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