「テメェ!」
幹部が銃を黒沢に向け、引き金を引いた。
が、建物の入口付近の柱に向かって走る黒沢には当たらない。
黒沢は弾切れになった自身の銃を胸ポケットに入れた。
その時。
「黒沢さん!」
建物の入口に安岡が現れた。
「安岡っ?!」
「何だテメェ!」
幹部が安岡に銃を向けた。
「来るなっ!」
黒沢は柱の陰から安岡に向かって飛び出した。
バァン!
幹部が放った弾丸は、安岡を庇おうとした黒沢の腹部に命中した。
「く、黒沢さんっ!!」
「ふっ。やっと仕留めれたか。」
銃を黒沢に向けたまま幹部が近づいてくる。
黒沢がウエストに挟んだ銃に手を伸ばそうとすると、幹部はもう一度安岡に銃口を向けた。
「お〜っと、動くなよ。ちょっとでも動いたら、この紛れ込んできたネズミ、撃ち殺すからな。」
「やめろっ・・・カタギの人間にチャカ向けんじゃねぇ・・・っ」
黒沢は体を丸め、よろめくように冷たい床に腰を落とした。
「黒沢さんっ!!何でっ?!」
安岡が黒沢の背後に駆け寄った。
「帰れ、安岡・・・俺は、大丈夫だから・・・お前の身に何かあったら、どう、するんだよ・・・」
「置いて帰れるワケないじゃん!俺絶対帰らないから!」
「はいはい、素敵な友情ごっこ、ご苦労さん。
・・・ほら、組長さんよ。持ってるチャカ、おとなしく全部出してもらおうか。・・・早くしろ!」
安岡に照準を合わせたまま幹部が命令する。
黒沢は、敵から取り上げた拳銃と自身の銃を全て幹部の前に放り投げた。
「よくもまぁ、見事に集めてくれたもんだな。騎馬戦じゃあるまいし。」
幹部は、黒沢が投げた銃を拾い上げては、黒沢のマネをしてそれ全てをウエストに差し込んだ。