「四宮の娘はどこだ。」
「その前に。お前本当にひとりか確認させてくれ。」
男はニヤニヤと笑いながら銃口を天井に向け引き金を引いた。
静けさを切り裂くような銃声は建物の内部で反響し、フェイドアウトしていった。
「銃声が鳴っても、どなたも援護に現れないとは。さすが組長だね〜。」
ニヤニヤしたまま、馬鹿にするような軽い口調で黒沢を挑発する。
「早く四宮の娘を解放しろ。」
「あぁ。そうすっかな。アンタが来たら、あんなガキもうどうでもいいんだ。」
男は後ろを振り返って「おい。」とだけ声をかけた。
男の弟分が小学生の少女を連れて現れる。
四宮の娘は口にテープを貼られ、ロープで両手を括り付けられていた。
弟分が娘の背中をトンと押すと、娘が黒沢に駆け寄ってきた。
黒沢はすかさずテープを剥がし、手の紐を解いてやった。
「おじちゃ〜ん・・・」
黒沢は泣きじゃくる娘を抱き締める。
「後で必ず迎えに行くから、この建物の外へ逃げておいてくれるか?いい子だからできるな?」
笑顔を浮かべ、少女の頭を撫でてやる。
「ん。」
涙をぽろぽろと流し、唇を噛み締めて大きく頷いた。
「えらいね。じゃあ外で待っててね。」
「ん。」
四宮の娘はもう一度大きく頷いて駆け出していった。
「クックックッ・・・『後で必ず迎えに行くから』だと?笑わせやがって。
生きて帰れると思ってんのかよ?!ウチの若い衆を何人天国に送れば気が済むんだ?!」
「俺は誰ひとりとして殺したことはないはずだが?俺の首獲り損ねた奴らをお前が自分で“処分”して地獄に送ってるだけだろうが。
若い衆は使い捨てじゃない。大切なコマを減らしても得なことはひとつもないぞ。」
「俺に説教するな!俺はガキの頃から説教ってのが大嫌いだったんだ!
・・・さっき1発でお前を撃ち殺してもよかったんだけど、そんなもったいないことはしない。
たっぷり生き地獄を味わわせてから死んでもらう。・・・行けぇっ!」