「見てわかりませんか?・・・この店を建て直しにきました。」
「あ!わかった!もしかしてあなた、リフォームの匠?!」
ソムリエが右手を高々と挙げて解答する。
「♪ちゃららららら~ん、ちゃらら~んら~ん、ちゃらららん~、ちゃらららんらん~」
劇的改造ビフォーアフターの匠登場のテーマを歌う3人の従業員。
「アホかっ!『建て直す』の意味が違う!」
酒井がソムリエの胸元に掴みかかった。
「なぁんだ。てっきり匠かと思っちゃった。てへっ☆」
「小さく舌出しても可愛くないわっ!」
「♪ちゃ~んちゃちゃちゃちゃ~ん、ちゃらら~らちゃちゃ~ちゃ~ちゃ~ん」
「なんということでしょう!」
ギャルソンが改築後のテーマを歌い、シェフがナレーションを担当する。
「歌うなっ!加藤みどりの真似すなっ!そろそろビフォーアフターから離れんかっ!」
「ねぇ酒井さぁん。そんなやりとりしてる間に伝説の『めぇとるどてる』さん、帰っちゃったよ?」
ソムリエの言葉に慌てて店の外へと追いかけ、再び綱引き状態で北山を店内へ引っぱってきた。
「・・・ぜぇ・・・そ、そんなに嫌ですか・・・ぜぇ・・・」
酒井が膝に手を置き、肩で息をしながら北山に尋ねた。
「はい。」
北山が即答する。
「んもぉ~、お前らっ!そこへ並んで立てっ!」
酒井が3人に向かって命令する。
その命令に3人は背の順(?)で縦に並び、前から順に身体を回した。
「あ~もぅ、ZOOするなっ!横に並べ横にっ!」
「はぁ~ぃ・・・」
スネた子供のようにションボリしながら年齢順に並んだ。
「おい黒沢、俺早死にすんのヤだから真ん中代われよ。」
ギャルソンがシェフの袖口をチョイチョイと引っ張った。
「しょ~もないこと気にすな!黙って話を聞けぇ!先に進ませろ!」
ついに地団駄を踏み出した酒井に3人はやっとおとなしくなった。
「では先生、お願いいたします。」
仕切りを北山に託し、酒井が一歩下がった。