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「あの〜、お願いがあるんですけど。」
彼が北山に声をかけた。

「はい。なんでございましょう。」
「来月末までの土日、昼でも夜でもいいので、貸し切りにできる日ありますか?」
「え?」
「ウェディングパーティをここで挙げたいんです。今日コース料理食べ損ねちゃいましたしね。」
「本当でございますか?!お調べいたします。少々お待ちくださいませ。」
北山は予約リストを確認しに行った。

「来月の末の土曜なら、まだ昼も夜も空いておりますが。」
「最後の週末か。うん、じゃあその日でお願いします。」
「ありがとうございます。こちらこそよろしくお願いします。」
北山は再び頭を下げた。

「ごちそうさまでした。おいくらですか?」
彼が店の玄関に向かいながら財布を取り出した。

「今日はお代は結構です。」
「え!ダメですよ、そんなの!」
「ソルベは試食ですし、カレーもまかないで作ったものです。今日はちゃんとしたものをお出ししておりませんので。」
「・・・いいんですか?ホントすいません・・・では来月楽しみにしてます。」
「ありがとうございました。」

5人でカップルに頭を下げて見送った。

彼が繋いだ彼女の手の薬指には、ダイヤの指輪がやさしい光を放っていた。


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