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「・・・はい?何ですか・・・?」
「警視庁特命係の北山です。」
「同じく黒沢で〜す。」
「なぁんだ、オジサンたち警察の人なの?セールスかと思ったよ〜。」

ふたりが刑事だと知った女子学生は、警戒心を緩めたのか表情の強ばりを解いた。

「驚かせて申し訳ありません。」
「お、オジサンって・・・ひどいなぁ〜・・・」
「で、オジサンたち何の用ですか?また空き巣の捜査?」
「そうです。ご協力お願いします。」
「ご協力ってさぁ〜、もう何回も話したよ?それなのにまだ犯人捕まらないワケ?しっかりしてよ警察ぅ〜・・・」
「申し訳ありません。」

律儀に深々と頭を下げる北山に、女子学生が「別にいいけどさぁ〜・・・」と呟く。

「君は〜、高校生だよね?○○高校の制服だもんね、それ。」
「何、オジサン。制服見て学校までわかんの?キモ〜・・・」
「よっ、陽一さんっ!『キモい』って言われましたよ『キモい』って!昔○○高校の近くで張り込みしたから覚えてただけなのにっ・・・ひ、ヒドいっ!」

メソメソと泣く黒沢を放って、北山がさらに話を続ける。

「たしか、こちらのお宅で盗まれたのは・・・バッグ4点と現金・・・」
「そ。私がママに買ってもらったバッグも盗まれちゃって・・・まだ未使用だったんだよ?
使う時まで箱に入れてしっかり保管しようとしてたのに・・・すっごくくやしい!」
「つまり、新品同様だった、というワケですか・・・」
「そうだよ。ママのバッグもまだ使ったことなかったり、1回2回使ったヤツだったり。しかも新しいモデルとか人気モデルばっかり狙われてさぁ〜・・・」
「人気モデル・・・」
「そうだよ〜・・・売ったらまだ高く売れるヤツばっかり!使いこんだヤツは見向きもしてないんだもん!それが余計にハラ立つんだよ!」
「なるほど・・・。あ、おウチの中、見せていただいても?」
「いいよ、別にぃ。けどカンシキ?とかって人が散々調べていってたけど。」
「承知しております。ですが、鑑識とはまた違った視点で、もう一度捜査したいのです。よろしいですか?」
「うん、別にいいけどぉ?どうぞ。」

女子高生に促され、ふたりは被害者宅に家に踏み入れた。

「ママが帰ってくる前に帰ってね?ママ、『まだ犯人が見つからない』『頼りない』って警察にいい印象持ってないから。」
「わかりました。お邪魔します。」
「おジャマしま〜す。」

新興の住宅地だけあって、家はほとんど傷んでいない。
まだ新築特有の建材の匂いも残っている。

「君んちは、窓は無事だったんだっけ?」
「うん、だからね、気味悪いんだよね。どうやって入ったかわかんないから。」
「そして、現金はリビングにあった財布の中から、でしたね?」
「そう、ママの財布の中からね。お札盗まれてたって。」

ふたりはリビングを見渡した。
しかしヒントになりそうなものは見当たらない。

「ねぇねぇ、君。バッグはどこに置いてあったの?」
「バッグはぁ、押し入れの中。」
「その押し入れを拝見しても?」
「いいよ。こっち。」

先導する女子高生の後をついていく。
2階の階段を上がって廊下の突き当たりが押し入れになっていた。

「この中。」
「その盗まれたバッグはどの辺りに?」
「一番奥の一番上の棚。」

女子高生が指差した棚だけ、何も置かれておらず、ぽっかりと空いている。


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