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鑑識課に到着した北山と黒沢は、まっすぐに鑑識官・酒井雄二の元へと向かった。

「お、来られましたな、おふたりさん。おたくの隣の課長から託(ことづか)っておりますよ。
はい、これ。ヤク売買のデータ集めておきました。どうぞ。」

北山は、酒井が差し出す資料の束を受け取り、目を通すことなく脇に挟む。

「ありがとうございます。」
「いえいえ。」
「これの他にもうひとつ、見せていただきたい資料があるんですが。」
「ほぅほぅ、何の事件の資料です?」
「△△ヶ丘で起こっている連続空き巣の件です。」
「おお、まだ未解決の事件でしたね、少々お待ちくださいね〜。」

さまざまな事件の資料を保管する倉庫へ向かった酒井は、しばらくして大きなボックスを抱えてふたりの元へと戻ってきた。

「はい、これですね。」
「わぁ〜、酒井サンキュ〜!」
「いえいえ、いつもカレーごちそうになってますから。」
「今日はなかったけどね〜。」
「いえいえ。ダイジョウVですよ。」
「シュワちゃん?」

黒沢とくだらない会話をしながら酒井がボックスの蓋を開けた。
中には証拠品と事件資料が収められている。

北山はボックスの中から資料を取り出し、早速黙読を始める。

「何軒かは実際に現場に駆り出されました。特にこれ。」

北山が読んでいた資料の一部を、酒井が指し示した。

「窓を割らずに入ってる住居からも、ほっとんど証拠が出なかったんです。
どの家もは物色した様子がなく、こちらもお手上げの状態でしてねぇ・・・」
「盗られているモノは何なの?」
「主に、現金とブランドのカバンやアクセサリーなどですね。」
「なるほど。・・・黒沢くん。」
「あ〜い。」
「行きましょう。」
「あ〜い。じゃあね酒井!ありがと!」
「いえいえ!いってらっしゃい!」

酒井に見送られ、ふたりはまた連続空き巣の現場へと向かった。
その車中、助手席に座った黒沢がぽつりと呟く。

「でも陽一さん、いいんですか〜?ヤクの売買の捜査、全くしてないですけど・・・」
「もちろんそちらの捜査も忘れてません。しかし空き巣事件の方も、一度携わったからには何とか解決に導きたいのです。」
「そですよねぇ。俺たち普段仕事もらえてないだけで、他の課の刑事なら2つ3つヤマ抱えるなんてよくあることですもんね。」
「事件に大きいも小さいもないのです、被害者にとっては。」
「はい!頑張ってふたつとも片づけちゃいましょ!ね、陽一さん!」


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