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午後11時15分―――

「ここが、売人の自供があった場所ですか・・・」

道幅の広い四つ角に立ち、辺りを見回す。

新興の住宅地。
生垣や塀に囲まれた新築の一戸建てがズラリと並んでいる。
上流家庭が住むお屋敷、というほど豪勢ではないが、中の上ぐらいのランクであることは間違いない。

「閑散としてますねぇ。」
「ホントですねぇ〜。人っ子ひとり、いや、犬すら歩いてないですよ?」
「今ぐらいの気候なら、冷暖房は効かせなくても窓を開けておくだけで随分と過ごしやすいはずですが・・・
この辺りの住宅を見ていると、どこも窓を閉め切っていて、カーテンも閉まっている。
つまり、共働きの家が多い、ということですかねぇ。」
「なぁるほど。さすが陽一さんですねぇ!・・・あ、住民の方が出ていらっしゃいました!」

ふたりの前方にあった一戸建ての玄関のドアが開き、40才代ぐらいの女性が現れた。
ドアにつけられた鍵を2ヶ所しっかりと閉め、門へと向かう。

ふたりは女性へと向かっていく。

「すいません、ちょっとお話を伺ってもよろしいでしょうか?」
北山が警察手帳を提示し、声をかけた。

すると女性は眉を顰めて「・・・また出たんですか?」と問い返す。

「は?『また』とは、何がです〜?」
「やだ、刑事さんたち、空き巣の件で来たんじゃないの?」
「空き巣?お宅に入られたんですか?」
「いえいえ!ウチは入られてないのよ〜?でもこの辺りで最近空き巣が多いみたいで・・・」
「そうだったのですか。だからあのようにドアに鍵を2つつけて用心されている、ということですね?」
「そうそう、そうなのよ〜。でもね、手口がいろいろあるみたいでね〜・・・
玄関のドアを開けられて入られてるパターンもあれば、窓を割られて入られてるパターンもあるらしくてね。
玄関ばかり用心していても窓割られたらどうしようもないわよね〜・・・。」
「うん、たしかにねぇ〜。」
「でもね、窓を割られて入られてたら、『あ〜!泥棒が入った〜!』ってすぐわかるけど、玄関から入ってきてるのは気づくのが遅いらしくて。
それはそれで厄介よねぇ・・・」
「気づかない、のですか?」

目の上のタンコブである刑事部長の陰謀により他の課からの情報を断たれている特命係のふたりにとっては、この話好きの女性の情報はありがたいものだった。
北山はさらに情報を得るため、うまく話を進めていく。

「そうなのよぉ〜、部屋に荒らされた形跡がないらしくてねぇ〜。
被害にあったご近所のお友達がいるんだけど、彼女に聞いたら『いつ入られたのか、いつ盗られたのか、わからない〜!』ってね。
彼女、とぉってもくやしそうだったわよ〜。」
「いつ入られたのか・・・」
「いつ盗られたのか・・・」

北山と黒沢は女性の言葉を復唱した。


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