「よっ、と!はいっ、やっと取れました!」
「よし。後ろへ引くぞ。せ〜のっ!」
村上と安岡が後ろに引いてくれるのに身をまかせる。
「はぁ、何とか取れてよかった・・・・・・ん?」
俺は柵の横棒の裏側、ちょうど縦棒との接点の角の部分に気になるものを見つけて、柵にしがみついた。
「ちょっ、酒井さん!柵に捕まらないでよ!」
「すいません!ちよっとそのままカラダ支えてもらっといていいです?」
「おまっ、何なんだよ一体!?」
前傾姿勢のままポケットに入れていたカッターナイフを取り出し、その気になるものをペンキごと慎重に削ぎ取った。
「はい、引いてください!」
「安岡、引くぞ!せ〜のっ!」
ふたりに後ろからズルズル〜っと引っ張られて、ようやく屋上の床に着地することができた。
「どうした?何か見つけたのか?」
「はぁっ、恐かった・・・あ、見つけたのはこれです。」
剥がしたペンキを透明シートに貼りつけ、村上に手渡す。
「・・・こりゃ何だ?」
「柵上部の横棒の裏側にこれが付着していました。」
村上はサングラスをずらし、目を凝らしてシートを見た。
安岡も横からそれを覗き込んでいる。
俺は剥いだペンキの中央にある黒い点を指差す。
「この黒い物体がものすごく気になります。」
「何かの塗料っぽくも見えるけど・・・何だろ〜?」
「確証は全くないのですが、もしかしたら・・・。署に戻って調べたいことがあります。車を出していただいても?」
「ああ、もちろん。安岡、行くぞ。」
「はいっ!」