「特命係の黒沢〜っ!!」
いきなり目の前で叫ばれ、否応なしに目が覚めた。
パチッと目を開けると、噛みつかれそうな近さに村上の顔があった。
「うわわわわわわっ!何?!」
あまりのド迫力に黒沢はソファから転げ落ちた。
「気楽な身分だなぁお前!何時まで寝てるんだよ!」
「・・・え〜??・・・今何時〜??」
「昼3時だよ。」
安岡がひょこっと黒沢の顔を覗き込み、答える。
「・・・・・・へぇ、お昼の3時かぁ〜・・・って、エェェェェェェエ〜!?」
「うっせぇ!」
「あ〜・・・今日カレー作れなかったぁ〜・・・」
ガックリと肩を落とす。
「さっき酒井が『今日はノーカレーデーだ』ってしょんぼりして帰ってったぞ。」
「よかったぁ!酒井、自殺してなかったんだぁ〜!」
「はぁ?!自殺ぅ?!・・・・・・ってそんなことはどうでもいいんだよ!お前本業の方はどうなってんだよ!」
「・・・あ〜!!そうだっ、陽一さん!・・・って陽一さんは?」
黒沢はキョロキョロと北山の姿を探す。
「北山警部なら、と〜っくに捜査に行っちゃったよ〜。ね〜、先輩っ。」
安岡が村上に顔を向けて言う。
「あ〜あ。置いてかれちゃった・・・」
黒沢はソファに崩れ落ちた。
「そりゃあ、しゃ〜ねぇよな。お前役立たずだから。」
「・・・・・・そうなのかな・・・やっぱりそうなのかなぁ??俺・・・役立たずなのかなぁっ・・・??」
涙目で近寄ってくる黒沢に顔が引き攣る村上。
「あ〜っ!泣くな泣くなよっ!シッ。シッ。」
「なぁ〜、安岡ぁ〜・・・俺って役立たずなの?・・・ねぇ・・・」
「あ〜、んもぅ、先輩言い過ぎですよ!ったく!・・・はぁ〜い、黒ポ〜ン。大丈夫。大丈夫だからね〜。」
安岡は赤ちゃんをあやすように黒沢の頭を撫でてやった。
「ダイジョウブ。」
ドアの方から低音。
一斉に声のする方向を振り返る3人。
「・・・大丈夫。役立たずじゃありませんよ?」
北山が改めて言い直す。
「よっ、陽一さぁん!寂しかったよぉ〜!」
昔のマンガのように「え〜〜〜ん!」と言いながら、黒沢は北山に駆け寄った。
「もうっ、置いてかないでよぉっ。役立たずじゃなかったら、捜査連れてってよぉ〜っ。」
「昨日あれからここに戻って鍋を洗うということだったので、寝たのは明け方かなと思いまして。」
「置いてった理由が鍋て・・・」
村上がぽそっと呟く。
「これからはちゃんと声掛けてねっ!俺、多少の睡眠不足でも平気だから!うん!」
「寝起き機嫌悪いくせに・・・」
安岡が同じくぽそっと呟く。
「で?あなたたちは?特命係に何か用事でも?」
北山は凸凹コンビと向き合って尋ねた。
「あ、自殺のやつ、進展あったかな〜っと思って様子を見に・・・イタタっ!痛いっ!痛いよ先輩っ!」
ペラペラとしゃべる安岡の腿を村上が抓る。
「用事なんてねぇよ。・・・またな。」
ズカズカと大股で去っていく村上。
「もうっ、あの人素直じゃないんだよね〜・・・。じゃ、またね!
・・・待ってぇっ、先輩っ!」
慌てて後を追う安岡。
「なんなの?あれ・・・」
「気になるんじゃないですか?例の事件、わたしたちがまだ調べているから。」
「にゃるへそね〜」
「・・・・・・。」