←BACK


翌日。

マジックを盗作されたと主張するマジシャンの元を再び訪れた。

「・・・またあなた達ですか。まるで犯人扱いですね。」
「そんなことはないですよ。もう少しお話を伺いたいと思いまして。」
「・・・何でしょうか?」
ため息混じりにぶっきら棒に返答する。

「あの公園を呼び出したのはあなたでしたね?」
「ああ。昨日も言ったと思うけど。」
「では、なぜあなたはあの公園を選んだのですか?」
「あの公園はあいつの練習場所だったからな。」
「練習場所?」
「俺達マジシャンにとって練習場所を確保するのは大変なことなんだ。
トランプみたいに手先だけを使うテーブルマジックなら家でもできるけど、少し大掛かりなマジックだと家の中での練習はできない。
それに他人に見られる場所での練習もできない。ネタを明かすことになるからな。
金のある奴はスタジオ借りたりするけどさ。」
「で、彼はあの公園を使っていたと。」
「そうだ。」
「今回の盗作のことをあいつと話そうにも、どこかの店でコーヒーや酒を飲みながらって訳にはいかない。
周りの奴に聞こえるかもしれないからな。」
「そういう事情があって、あの公園に呼び出したのですね。」
「ああ。」
「わかりました。・・・最後に。彼に会った時、彼は酒を飲んでましたか?」
「いいや。シラフだったよ。あんまり酒に強い奴じゃなかったしね。」
「そうですか。・・・ありがとうございました。」

頭を下げ帰ろうとするふたりの背後から、「なぁ。」とマジシャンが声を掛けてきた。

「・・・何でしょう?」
「あいつが自殺した理由が俺にあったら・・・俺は罪に問われるのか・・・?」
「いいえ。あなたが手を掛けたのでなければ罪には問われません。
彼が死んでしまったので盗作の真偽も闇の中です。遺書も見つかってませんしね。
・・・失礼します。」

ふたりはマジシャンの元を後にした。

「陽一さん、もしかしてさっきの男が犯人なんですか?」
「・・・犯人です。おそらく。・・・一旦戻りましょう。鑑識に行って調べてもらいたいものがあります。」
「何を調べるの?」
「それは見てのお楽しみです。」
「案外ケチだね。」
「何ですか?」
「別にぃ。」


→NEXT

→ドラマTOP